「陸前高田の漁撈用具」国重要民俗文化財に指定 被災から修復した郷土の宝 市立博物館が特別展計画

▲ 指定書を手にする佐々木市長(左から3人目)、山田教育長(同2人目)、松坂館長(同4人目)
「陸前高田の漁撈用具」(市立博物館提供)

 陸前高田市立博物館(松坂泰盛館長)が収蔵する「陸前高田の漁撈用具」3028点

が、国の重要有形民俗文化財(重文)に指定された。1月に国の文化審議会が新たに指定するよう文部科学相に答申しており、今月22日に官報で告示され、正式に決まった。三陸沿岸のなりわいを知る地元の財産で、東日本大震災の津波で被災したものの、地元漁業者や関係機関の協力で救出・修復された。同館は今後、指定記念の特別展示を計画している。(高橋 信)


 指定書の交付式は22日、東京都千代田区の東京會舘で開かれ、松坂館長と同館の熊谷賢主任学芸員が出席。24日には山田市雄教育長や松坂館長らが、市役所で佐々木拓市長に指定を報告した。
 「陸前高田の漁撈用具」は、アワビ漁などで用いる「磯物採取用具」や海中に仕掛けて魚介類をとる「陥穽漁用具」、豊漁を祈願する「信仰・儀礼用具」など、用途や目的別に11分類で構成する計3028点。漁業技術の変遷などを知る貴重な資料となっている。
 市立博物館は昭和34年の開館当初から、地域に根ざした施設を目指し、市民から寄贈を受けた資料をメインに展示。平成7年からは世界三大漁場である三陸沿岸の地域として、漁撈用具を充実させようと、地元漁業者を民俗資料収集協力員に委嘱し、本格的に資料の収集に取り組んだ。
 平成20年には、2045点が国の登録有形民俗文化財に登録された。重文への指定を目指して地道に活動していた中、震災が起き、同館とともにすべて被災した。
 回収できたのは1922点。他の被災資料同様、全国の博物館などの協力で脱塩する安定化処理をしたあと、用具を熟知する地元漁業者で、長年収集協力員を務めた村上覚見さん(故人)=広田町=らの力を借り、修復した。
 用具の名称や使用・制作方法など1点ずつ情報を網羅した資料カードも失ったため、漁業者から聞き取り、情報をまとめる作業も一からやり直した。並行して収集を継続し、3000点を超える用具を集めた。
 県内で重要有形民俗文化財に指定されるのは、平成15年以来20年ぶり9件目。気仙では大船渡市の「大船渡のまるた」1隻が昭和33年に県内第1号として指定されており、今回で2件目となった。
 市立博物館は高田町の中心市街地に再建され、昨年11月に開館。「陸前高田の漁撈用具」は約100点を常設展示している。4月下旬からの大型連休に合わせ、企画展示室で指定記念の特別展示を予定している。
 山田教育長は「1次産業に根付いた陸前高田の資料が国のレベルで評価され、誇らしい。開館以来、まちのにぎわい創出に貢献している市立博物館にとっても、重文があるというのは大きな強みになる」と話した。
 佐々木市長は「文化財としての価値が認められ、指定を受けたのは非常に喜ばしいこと。開館したばかりの博物館にとって、大変明るい話題だ。地元の誇りとして広がるよう、多くの市民に見ていただきたい」と期待を込める。