5年度 運行エリア拡大へ 市の自動運転技術導入実験 新たに市街地の走行計画 本年度の実績踏まえ
令和5年3月28日付 1面

陸前高田市は令和5年度、同市の高田松原津波復興祈念公園から高田町の中心市街地間で、時速19㌔以下で走る自動運転バスを試験走行する実証実験を実施する。本年度、同園内で2度実施した実験の成果を踏まえ、運行エリアをまちなかまで拡大し、一般車両が行き交う公道での運行課題やニーズを確かめる。実施時期は9月以降を想定しており、2年後の本格導入に向け、先端技術を取り入れた移動手段の可能性を探っていく。(高橋 信)
9月以降1カ月間の実施想定
実験1年目の本年度は、昨年9月と、今年2~3月に実施。それぞれ10人乗りの小型バス1台を使用し、公園内の東日本大震災遺構を周遊しながら運行上の課題や利用者の反応を調査した。
5年度は、車両を2台使う計画。1台は公園からまちなかまでを往復し、現時点で国道45号や避難道を兼ねている市道「シンボルロード」などを通るルートを想定している。もう1台は本年度同様、公園内を巡り、技術面の検証を深化させる。
実施期間は9月以降の約1カ月間を見込んでいる。運行ダイヤや停留場所は今後、検討していく。2台とも乗車は無料で、利用者アンケートを行う。
祈念公園の面積は130㌶と広大で、東西に広がる園内には奇跡の一本松やタピック45(旧道の駅高田松原)など五つの震災遺構が点在している。県内外から大勢の観光客が訪れる一方で、園内の移動手段は徒歩しかなく、市は震災の教訓を効果的に伝えるための移動手段の確保を検討してきた。
そこで着目したのが、時速19㌔以下で走る自動運転車。本年度1回目の実験は、運行ルートを見学者の多い園内西側に絞った。運行日数は18日で、780人が乗車。震災遺構を案内するパークガイド付きの便も用意した。
2回目の実験は、走行エリアを園内全域に拡大し、29日間運行。自動運転技術の実証に加え、客足が遠のく冬季の需要も探った。
運行便数は平日159便、休日77便の計236便。利用者数は平日354人、休日333人で、計687人。1日当たりの平均利用者は23・7人で、前回実験対比で4割強減となった。
利用者アンケートも実施し、244人が回答(回収率35・6%)。総合満足度は81・3%が「良い」または「やや良い」と答えた。
実験では公園近辺の国道45号上を一部走ったが、事故などのトラブルはなかった。安全性を確認できたことから、5年度はまちなかへ展開していく。6年度のシステム開発やインフラ整備を経て、実用化は7年度を予定している。
舟波昭一副市長は「実証実験を安全に終えられたことは大きな成果だ。利用者の反応も知ることができ、貴重な機会となった。まちなかにも市立博物館など震災の教訓を伝承する施設があり、次の実証実験で効果を確かめたい。公共交通はドライバー確保も課題であり、将来的に自動運転が実装されれば、そうした課題の解消策にもなる」と展望する。