被災乗り越え振興に尽力 気仙初の大臣賞に輝く 広田の農事組合法人と営農組合 農業農村コンクールで
令和5年3月29日付 7面

陸前高田市広田町の農事組合法人・広田半島(臼井剛代表理事)と広田半島営農組合(熊谷信義組合長)は、農地、農村改良の優れた取り組みをたたえる本年度の農業農村整備優良地区コンクール(全国土地改良事業団体連合会主催)で、最高賞の農林水産大臣賞を受賞した。東日本大震災の津波で被災した水田でいち早く営農を再開し、農産物の6次産業化に積極的に取り組むなど、農業振興への各種事業が評価された。同コンクールでの大臣賞受賞は気仙地区で初めて。(高橋 信)
6次産業化の取り組みも
臼井代表理事(79)や熊谷組合長(71)は27日、陸前高田市役所を訪れ、佐々木拓市長に受賞を報告。佐々木市長は「大変素晴らしい。郷土の宝になる賞をいただいた」とたたえた。
広田半島営農組合は平成21年12月、農業従事者の高齢化、兼業化などの課題を解消し、水田農業の持続化を図ろうと発足。翌22年、地権者から農作業を受託する特定農業団体として認可を受け、同年10月に郷土菓子などを製造する加工場「工房めぐ海」をオープンするなど、就労の場確保にも励んだ。
そうした中で、東日本大震災が発生。町内5カ所に整備していたほ場23・6㌶のうち、大部分が津波で被災し、事務所や加工場などの施設を失った。発災年に一部地区で田植えを敢行し、秋には無事収穫を行った。
その後、事務所や加工場を復旧させ、平成27年3月には営農組合の農産物生産部門を独立させる形で、農事組合法人・広田半島を設立。ほ場整備は30年度までに完了し、米をメインに、カボチャやショウガなどの野菜も生産している。
工房めぐ海で女性たちが作る看板商品の「おやき」は生地に米粉を、中の具材に広田湾産の茎ワカメやホタテ、米崎りんご、ショウガなどの地場産品を使い、地元内外で人気を集める。売り上げは新型コロナウイルス禍の影響でピーク時と比べて一時半減したが、現在は回復基調にある。
コンクールは、農村の振興に向けて活力と個性ある地域づくりを進めている地区・団体を表彰するもの。農業振興部門と中山間地域等振興部門の2部門があり、広田半島と広田半島営農組合は中山間地域等振興部門で農水大臣賞に選ばれた。本県での同賞受賞は5件目で、気仙地区では初めて。
熊谷組合長は「県や市などの関係機関の指導や協力のおかげで続けてこられた。改めて感謝している」と喜びもひとしおの様子だった。
臼井代表理事は「課題は担い手確保と機械の更新。これをクリアできれば持続化につながる。営農の低コスト化やスマート農業などにも積極的に取り組んでいきたい」と見据える。