次回朝ドラモデルの学者・牧野氏との手紙 市立博物館にレプリカ展示 地元の学者・鳥羽源藏コーナーに

▲ 市立博物館に展示されている手紙のレプリカ

 4月3日(月)スタートのNHK連続テレビ小説「らんまん」で主人公のモデルになっている天才植物学者・牧野富太郎氏。陸前高田市立博物館には、同市出身の博物学者・鳥羽源藏氏と牧野氏がやり取りした手紙のレプリカが展示されている。牧野氏は「日本植物学の父」、鳥羽氏は「岩手博物界の太陽」と称され、手紙は研究に人生をかけた偉人同士の交流を後世に伝える貴重な資料で、朝ドラ放送を機に注目が高まりそうだ。(高橋 信)

 

交流の証しに熱視線

 

牧野富太郎氏(高知県立牧野植物園提供)

 牧野氏は文久2(1862)年、高知県高岡郡佐川町で生まれた。植物分類学の研究に打ち込み、94年の生涯で収集した標本は約40万枚といわれる。新種など1500種類以上の植物を命名し、日本植物分類学の基礎を築いた人物として知られる。全国各地を巡り、植物知識の普及にも尽力し、刊行した「牧野日本植物図鑑」は現在でも研究者や愛好家の必携の書となっている。
 牧野氏から鳥羽氏に宛てられた書簡の複製は、鳥羽氏の功績を紹介する市立博物館の「博物学の世界」コーナー内に展示している。明治36(1903)年4月の手紙で、同館の意訳文によると、鳥羽氏から寄せられた植物標本に関する謝意や鳥羽氏の岩手県農事試験場赴任を祝うメッセージを記している。鳥羽氏に「標本の照会をお願いしたい」として、牧野氏が手書きした植物の学名、和名のリストの複製も飾っている。

鳥羽源藏氏(陸前高田市立博物館提供)

 鳥羽氏は明治5(1872)年、現在の小友町で生まれた。植物分類学の牧野氏のほか、考古や地質、昆虫など幅広い研究分野の第一人者から教えを受け、岩手師範学校教諭として後進の育成にも力を入れた。県内の史跡や天然記念物の調査、保存に関わるなど本県の博物学の基礎を築いた。
 市立博物館などによると、鳥羽氏は明治34(1901)年から牧野氏に師事し、植物分類学の研究を開始。大正12(1923)年に起きた関東大震災の翌年、牧野氏から自身の無事を知らせる年賀状が届くなど、研究以外でも手紙でやり取りをしていた。
 市立博物館は、牧野氏からの手紙やはがき約20通を所有している。いずれも東日本大震災の津波で被災したが、安定化処理を済ませ、2人の交流の様子をうかがい知れる。1通を常設展示しており、残りは同館などで収蔵・保管している。4月以降、準備が整い次第、別の手紙を特別公開することとしている。
 同館の熊谷賢主任学芸員は「市立博物館の基礎を築いた鳥羽先生が、朝ドラのモデルにも採用される植物学の第一人者と交流があったことは地元にとって誇らしい。鳥羽先生は牧野博士をはじめ、各分野の第一人者と交流が深く、幅広い分野で深く研究していた。ぜひ博物館に足を運んでもらい、牧野博士との手紙はもちろん、鳥羽先生の功績を見てほしい」と呼びかける。