総合型りくぜんたかた きょう事業終了 震災後発足し運動の楽しさ伝え続け 駆け抜けた10年4カ月
令和5年3月31日付 7面


フィンランド発祥の「モルック」の普及にも取り組んだ
陸前高田市のNPO法人・総合型りくぜんたかた(村上勝理事長)は、31日に事業を終了する。東日本大震災後、運動を通じて地域コミュニティーの形成に寄与しようと、総合型地域スポーツクラブとして旗揚げし、10年4カ月にわたって活動。子どもから高齢者まで幅広い世代に多様な運動の機会を提供し、同市の生涯スポーツ振興に貢献した。
総合型りくぜんたかたは震災翌年の平成24年11月、津波で体を動かす環境を失った市民らの運動のきっかけを創出しようと発足。翌25年4月にNPO法人化し、スポーツ振興くじ(toto)の助成金などを受けて本格始動した。
掲げた理念は「誰もが、いつでも、集える場・機会をつくろう」で、象徴的な活動となったのが同法人が独自に考案した「玉入れタイムレース」だ。仮設住宅敷地の一角など、限られたスペースでも実施できるリレー形式の玉入れで、性別や年代を問わず楽しめる運動として、スタッフが各地に出向いて普及を図った。
「陸前高田まるごと運動会」は、震災前まで市内各地区の秋の一大行事として親しまれた町民運動会の中断を踏まえて企画し、新型コロナウイルス流行前の令和元年まで毎年開催。津波でプールを失った地元の子どもたちのために、大船渡市内の屋内プールで開いた出張水泳教室は、クラウドファンディングで参加者の貸し切りバス代を集めるなどして続けた。
その後、復旧したスポーツ施設を活用しながら、健康増進につながるスポーツ吹き矢、景色も楽しめるノルディックウオーキング、未就学児向けの体操、女性のためのヨガなど、毎年、新たな教室を追加。コロナ禍の影響下でも会員や地域から求められる活動を模索してきた。
一方で、スタッフの頭を悩ませたのが運転資金の確保だった。頼みの綱となっていた官民からの助成金、補助金は年々細り、事業の継続を断念。今月末でピリオドを打つことを決めた。
吉田由香マネジャー(59)は「開催してきた教室を通じてさまざまな人とつながりが生まれ、たくさんの思い出がある。SNSで活動を発信するため撮った子どもたちの笑顔が忘れられない。続けてこられたのは地域の皆さんのおかげ」と感謝する。
戸羽理智マネジャー(62)は「活動終了を惜しむ声を予想以上にいただき、純粋にうれしかった。事業は一区切りとなっても、これまでの10年4カ月の取り組みはなくならない。最後まで駆け抜ける自分たちらしい終わり方だったと思う」と総括した。
(高橋 信)