若手の比率 県内トップ級 町職員の育成や業務省力化急務に
令和5年4月9日付 1面
人口減少も背景として、全国的に市町村職員の人手不足が顕著になっている。現在100人余りの職員がいる住田町は、その平均年齢(再任用含む)が県内でもトップクラスの低さとなる39・2歳。将来を担っていく若手の比率が高い一方で、政策立案業務や職員の育成・サポートに当たる中堅層以上が不足し、一人当たりの業務量が増加傾向にある。町はデジタル技術活用による業務省力化を進めているが、持続可能なまちづくり、行政サービスの維持・向上に向けては若手育成が急務となっている。 (清水辰彦)
地方公務員数は平成半ばから後半にかけて、財政健全化の一環として、業務範囲の縮小や業務効率の改善に伴い減少。その後は横ばいとなってきたが、近年は多発・激甚化する自然災害や新型コロナウイルス対応へのニーズの高まりによって業務量が増加傾向にあることも手伝い、担い手不足が顕在化しつつある。
県が昨年度に公表した県内各自治体の一般行政職の平均年齢(令和4年4月時点)は、同町が39・4歳と、滝沢市(38・7歳)、葛巻町(38・8歳)、矢巾町(39・3歳)、金ケ崎町(同)、山田町(同)に次いで33市町村中6番目に低かったが、新年度を迎えてさらに平均年齢は下がった。
若手という〝新しい風〟が増える一方、中堅層の不足が庁内の課題として挙げられる。町職員の年代別構成は、20代以下32人(30・8%)、30代23人(22・1%)、40代26人(25・0%)、50代以上23人(22・1%)で、特にも若手の指導的立場を担う30代後半が圧倒的に不足している状態。一人当たりの業務量が増加していけば、本来行うべき政策立案業務にまで手が回らなくなる恐れもある。
人口減少が進む中、今後はなり手のさらなる減少も見込まれる。将来にわたって現状レベルの行政サービスを提供していくためには、若手育成と業務効率化・省力化が不可欠な局面を迎えている。
こうした中、町では昨年度から「メンター制度」を導入。所属部署の上司とは別に、年齢や職歴が近い先輩が若手を精神面などで幅広くサポートするもの。
町では入庁5~10年目ほどの職員がメンターとなり、仕事に限らず私生活面での相談に対応し、若手や町外出身職員の働きやすい環境づくりに努めている。
また、本年度からは職員の定年を段階的に引き上げていく。本年度は61歳定年とし、2年に1歳ずつ引き上げて13年度からは65歳が定年となる。これにより、経験豊富なベテラン職員の技能の活用や若手への継承などが期待されている。さらにはDX(デジタル・トランスフォーメーション)を推進し、業務の効率化・省力化を図ることとしている。
神田謙一町長は「若手の育成については元々から課題となっていた。若手による県との人事交流の比率を上げ、これをルーティン化しながら、人と人とのつながりを含めて幅を広げてもらいたい」と人材育成の重要性を語り、一方で「若手の比率が多いことで、DX活用などに取り組みやすい面もある。そこはメリットとしていきたい」としている。
毎年100人ペースで人口が減少していく同町。持続可能なまちづくりを進めていくためには、DX推進による業務効率の向上、自治体の枠を超えた人材の活用や専門人材の育成、地域との協働推進などの重要度も高まっている。