満開祝う「寺町桜観桜会」 日頃市町の長安寺地域 10年超の管理 実を結ぶ(別写真あり)
令和5年4月11日付 7面

大船渡市日頃市町の長安寺公孫樹の会(山下哲夫会長)などによる「寺町桜観桜会」は9日、長安寺地域公民館で開かれた。岩手開発鉄道の線路や盛川沿いに平成22年から植樹を始め、10年以上にわたり地道な管理を重ねてきた桜並木は、今では名所の一つになった。さまざまなピンク色の下で、地域住民が笑顔を交わした。(佐藤 壮)
観桜会は、寺町桜を育てる会(佐藤忠清会長)や長安寺地域公民館(鈴木俊二館長)とともに開催。ここ数年は新型コロナウイルスの影響で顔を合わせる機会が少ない中、地域住民が集まって「お花見会」を楽しもうと企画したところ、約40人が集まった。
公民館前では、満開のサクラを背に並び、笑顔で記念撮影。館内では山下会長が「毎年少しずつ増やし、全部が咲きそろうことができたのは、皆さんのおかげ」と述べたほか、公孫樹の会が令和4年度の「大船渡花と緑のまちづくりコンクール」(おおふなと花の会主催)で最優秀賞に輝いたことも報告した。
花壇整備に協力した地元在住のフラワーアドバイザー・藤原喜久江さんと、長年の「酒林」作りがたたえられ、一昨年に東海社会文化賞を受けた公孫樹の会の近江一史副会長にそれぞれ、記念品を贈呈。乾杯後の懇親では和やかに語り合ったほか、地元住民らによるチンドン寺町一座の演奏でも盛り上がった。
長安寺地内の盛川沿いでは平成19年、樹木の老化や河川工事のため、地域内外に知られていたサクラが伐採された。同22年、地域住民が空き地を生かした桜並木の復活を要望し、市がベニヒガンザクラやシダレザクラ計10本を植樹。管理は住民が担うことになった。
東日本大震災が発生した23年春は後方支援に尽力し、近くの長安寺には震災犠牲者の葬儀・法要で多くの遺族が訪れる中で「少しでも心の癒やしになれば」と、有志が寺町桜を育てる会を発足。各種団体などからの助成を受けながら25年まで植樹を続けた。
シカの食害被害などで思うように進まない時期もあったが、住民たちはあきらめず、作業を継続。公民館内で組織した60代以上の住民による公孫樹の会では管理に加え、コロナ禍前は観桜会を企画してきた。
5年ほど前から開花の木が増え、今では盛川右岸北側や公民館周辺などに計100本が並ぶ。ソメイヨシノやオオシマザクラ、カワヅザクラもあり、山肌や河川沿いの緑の中で濃淡豊かなピンク色が映える。公孫樹の会は今後も、桜並木を生かした交流機会創出や管理継続に意欲を見せる。