マグロ 大大漁 「過去最高」一気に265本 市魚市場 漁獲枠早期到達の懸念も(別写真あり)

▲ 場内にずらりと並んだ1本100㌔前後のクロマグロ

 大船渡市大船渡町の市魚市場に14日、気仙沿岸の定置網から1本平均約100㌔のクロマグロ265本が水揚げされた。堂々たる大物が場内を埋める光景に、魚市場関係者からは「過去最高だ」「すごい」といった声が飛び交った。4月としてはかつてない豊漁で活気づいた一方、すでに県が示す本年度の漁獲枠の上限に近づいており、漁船漁業を含め今後の操業に懸念の声も出ている。(佐藤 壮)


 この日は白石(㈲道下漁業)と脛崎大輪(同)、椿島(広田湾漁協)の各漁場で操業した定置網船が次々と接岸。特に、椿島の水揚げでは100㌔前後のクロマグロが230本に達した。
 フォークリフトの往来が追いつかないほどの慌ただしさに包まれ、場内は黒光りする漁体で埋め尽くされた。毎日通う買い受け人らも、圧巻の光景に驚きながら、スマートフォンなどで撮影していた。
 同漁場の臼井英夫大謀は「宮城県側から上がってきていて、かかってほしいと思っていたが、これほどの大漁は記憶にない」、大船渡魚市場㈱の千葉隆美社長は「4月としての量はもちろん、一日だけでこれぐらい揚がったのは過去にない。海に感謝しかない」と話した。
 入札の結果、1㌔当たり4640円~1710円の取引に。数量の合計は27㌧を超えた。氷を詰めた木箱に入れられ、地元内外に出荷された。
 市魚市場では、10日にもクロマグロ73本の水揚げがあった。今月は定置網船によるまとまった水揚げが相次ぐ。14日、クロマグロの水揚げが40㌧に到達した。
 一方、この日の場内では「もろ手をあげて喜ぶ状況ではない」「これからが大変かもしれない」といった声も聞かれた。県が県内漁業者向けに示す大型魚の枠は本年度54・9㌧で、早期の上限到達が現実味を帯びる。
 県内では大船渡に限らず、漁況を受け、増枠を求める声は根強い。前年度到達しなかった分の〝繰り越し〟を含めても、現状では大幅な変更は難しい状況にある。
 県農林水産部水産振興課では「国から配分されたものであり、枠を超えた場合は来年度の量に反映されるため、基本的には枠の中での操業をお願いすることになる。国には昨年度も増枠を働きかけてきたが、本年度も引き続き行っていかなければいけない」としている。
 太平洋クロマグロの資源回復が求められる半面、漁獲枠は定置網だけでなく、近海で操業するはえ縄船なども含む量であり、漁船漁業者にとって切実な問題。県近海漁船漁業協会の鎌田和昭会長理事=大船渡市赤崎町=は「漁に出たくても出られず、泣き寝入りの状況。はえ縄船をはじめ漁船側のこともしっかり考えたうえで、管理の枠を示してほしい」と力を込める。