アツモリソウを後世へ 町が栽培技術伝承本発行 5月に役場で先行販売

▲ 5月に販売開始となるアツモリソウ栽培技術伝承本

 住田町は、「アツモリソウ栽培技術伝承本」を発行した。町花でありながら、自生数は激減し、栽培も難しいことから希少性が高まるアツモリソウ。町内の保護・増殖団体が長年積み上げてきた知識や栽培技術、住田とアツモリソウの関わりを後世に伝え、末永く守っていこうとの取り組み。25日に関係者へのお披露目と完成報告などを行ったうえで、5月に町役場農政課窓口で先行販売する。(清水辰彦)

 

 アツモリソウは山地の草原に生息するラン科の多年草で、美しい花姿は「山野草の女王」とも呼ばれる。町内ではカッコウが鳴く5月中旬から6月にかけて花を咲かせることから、「かっこ花」の愛称で親しまれている。町は昭和60年の町制施行30周年記念事業として町の花に制定した。
 一方で、自生地である山野の環境変化や盗掘などによって数が減り、環境省のレッドデータブックにおいては絶滅危惧Ⅱ類に分類されている。
 町内では長年、アツモリソウ研究会(多田茂会長)がバイオ苗で、かっこ花を守る会(菊池賢一会長)が株分けによって、それぞれ保護・増殖に努めている。
 栽培技術伝承本は、両団体が長年研究してきた栽培技術を後世に伝えていこうと、昨年度末に発行。東海新報社が委託を受けて取材、編集した。
 伝承本は全5編で構成しており、第1編ではアツモリソウの特性や名前の由来を説明。第2編では町とアツモリソウの歩みについて、過去の町広報誌や新聞記事なども用いながら紹介し、研究会、守る会をはじめ、アツモリソウに関わる人々へのインタビューも掲載している。
 第3編は栽培方法。「栽培の手引き」として四季の管理例、用土や肥料の一例、植え替えと株分けの手順などを伝えている。第4編ではバイオ増殖事業について、第5編では年表でアツモリソウと住田の歴史を振り返っている。
 また、町営ケーブルテレビ・住田テレビでは株分け作業や用土、肥料の配分などの〝実践映像〟も収録し、栽培方法を分かりやすく伝えるDVDを制作。伝承本とセットで販売する。
 伝承本は1000部作成。A4判で計112㌻。5月中は町役場農政課で1部2000円(税込み)で先行販売。6月からは世田米の道の駅種山ヶ原ぽらん、上有住の赤羽根直売所でも1部2500円(同)で販売する。
 町農政課では「アツモリソウを未来に伝えていく一助になれば」としている。
 伝承本に関する問い合わせは同課(℡46・3861)まで。