親潮弱化や水温上昇など指摘 サンマ沖合化の背景分析 水産研究・教育機構が不漁要因調査

▲ 大船渡市魚市場における主力魚種のサンマ。近年は公海で操業した漁船の水揚げが主体となっている(昨年9月)

 国立研究開発法人の水産研究・教育機構(本部・神奈川県横浜市)は、サンマの不漁要因解明に関する調査結果を公表した。日本の漁獲量は平成22年に発生した分布域の沖合化を契機とし、その後も海洋環境変化やマイワシ、サバの増加などを受け、資源の減少が継続。沖合化の背景として、親潮の弱化や、道東・三陸沖の水温上昇などを指摘している。大船渡港は本州トップを堅持するが、遠く離れた公海で漁獲した大型船の水揚げが大半。同機構では今後も、サンマの生態変化が進む原因の究明を進める。(佐藤 壮)

 

 令和3年、水産庁で開催された「不漁問題に関する検討会」で、不漁の要因となる環境変化や、漁海況などの状況を継続的に把握する意見などが取りまとめられた。これを受け同機構では、以前からの調査成果も生かし、要因解明に向けた研究を水産庁の委託事業で行ってきた。
 公表内容によると、サンマの分布域は日本周辺だけでなく、北太平洋の亜熱帯から亜熱帯海域のアメリカ沿岸まで広がる。春~初夏には、太平洋のはるか沖にいたサンマも、秋には日本周辺にまで回遊。しかし、6~7月の分布量は、とくに日本に近い海域での減少が顕著になっている。
 夏~秋のサンマ漁期における低水温の親潮は、約30年前をピークとして徐々に流れが弱くなり、10年ほど前から道東沖に達しなくなった。強さは少しずつ回復を見せるが、今も道東沖に達する状況は戻っていない。
 えさとなる動物プランクトンも、平成22年以降は減少。北海道沖が顕著な減少を示し、沖合でも同様に少なくなっている。
 サンマの産卵は、本州南側の海域からその東の沖合で行い、冬季が中心。しかし、近年は本州東側の黒潮の流れで近海で北上できず、東の沖合に流されやすくなったと考えられる。沖合で成育した稚魚は、日本近海と比べて、成長が悪い傾向がある。
 漁獲サイズのサンマを模した回遊モデルにより、近年の来遊の遅れの原因を調べた結果、漁期前の6~7月における体重の減少が、産卵場に向かう回遊開始の遅れと関係していることが分かった。これにより、本州沿岸域に到達しないまま、本州の東方沖合域を南下するサンマが増え、日本沿岸まで来遊しない状況が考えられる。
 10年ほど前からは、マイワシとサバが日本近海で増え、分布域も拡大。40年前のマイワシ高水準期にもサンマ漁場が沖合化したことが知られており、同機構では今後も調査・研究を続ける。
 さらに、漁船で収集されるデータを活用する技術開発を進め、サンマや他の魚種の季節変化を把握する研究に取り組んでいる。また、遺伝子解析では、成熟が早い固体ほど西方回遊の開始時期が早いことが分かってきた中、さらに詳細な条件下での生態変化の原因解明を目指す。
 全国さんま棒受網漁業協同組合(全さんま)のまとめによると、令和4年の全国総水揚げ数量は前年同期比2%減の1万7910㌧。昭和36年から集計を続ける中、最低を更新した。30万㌧を超えた平成21年と比べ、6%にも満たない実績に終わった。
 大船渡市魚市場の水揚げは、数量が前年同期比24%増の3054㌧で、本州トップの実績。苦境が続いた一方、地元漁船や水産加工業の積極的な動きもあり、全国的に見ても増加幅が際立った。
 半面、三陸沖での実績は、ほぼゼロのまま推移。漁獲から寄港まで数日を要する公海での操業が続き、燃油費が高騰する中で、漁船側も厳しい状況を強いられている。