気仙の魅力 ツアーで発信 岩手開発産業㈱ 地元密着型旅行で新展開

▲ 気仙のツアーに特化したサイトを立ち上げた岩手開発産業

 大船渡市盛町の岩手開発産業㈱(伊藤林人社長)は、地元密着型旅行サイト「三陸ツアーズ」を立ち上げた。同市をはじめ、気仙の魅力をツアーの形で発信するほか、地元の隠れた魅力を発掘しながら、観光資源としてさらなる活用も見据える。個人旅行客向けに、より気軽に体験、観光できる仕組みづくりを進め、好評を博した地域イベント企画のツアー化や、漁業者をはじめ産業活動での交流など、きめ細かい発信・提供を目指す。(佐藤 壮)

 JTB総合提携店で旅行業を展開する同社の岩手開発観光は、国内外のさまざまな旅行手配・手続きに対応。市内を巡るツアーなどの運営・企画も実施してきたが、地元に特化した発信は行っていなかった。
 今年2月、社内に地域共創事業部を立ち上げ、気仙に観光客らを積極的に呼び込み、地域活性化につなげていこうと事業を展開。第1弾として、今月12日付で新たな営業所「三陸ツアーズ」を構えたほか、同名サイトも公開した。
 ホームページ内で紹介しているツアーは、気仙で宿泊・体験できるメニューが中心。30日(日)に陸前高田で開催される三陸花火大会に合わせた宿泊ツアーや地元住民向けの往復バスプラン、ホタテ養殖場見学、水平線から昇る朝日を眺めるツアーなどが並ぶ。
 旅行業者が運営する強みを生かし、ホームページから直接申し込みができる形に仕上げた。ツアー内容の詳細情報も網羅しているほか、英語表示や英語での申し込み、問い合わせを可能とするなどインバウンド需要にも対応する。
 気仙で楽しめるツアーを増やすことで、さまざまな体験を紹介する「まとめサイト」としての活用にも期待を込める。これまで、宿泊施設ごとに電話やネットで予約できる半面、滞在中の空き時間に気軽にインターネットで体験を予約できる仕組みは少なかった。「オプショナル」としてサイト情報を充実させ、幅広い観光客が目に触れやすい運用を目指す。
 気仙の各種団体が主催するさまざまな体験・イベントでは、地域資源を生かした企画が多い。こうした内容をツアーとしてまとめたり、有料の体験メニューとして整え、持続可能な観光資源づくりを進める。気仙の住民が参加しやすく、地元の良さを再確認できる機会も重視する。
 気仙をはじめ三陸沿岸は東日本大震災以降、復興関連の動きで観光客が伸びた一方、新型コロナウイルスの影響で大きく落ち込んだ。行政側はこれまで、宿泊料を助成するなどして下支えしてきたが、今後は事業者側も知恵を絞った戦略が求められる。
 また、震災を機に、気仙では大学生やボランティア団体が漁業活動体験を通じて交流を深める機会が増加。充実した活動からつながりが生まれ、継続している一方、個人旅行者が体験しやすい仕組みは整っていない。地域共創事業部の担当職員は浜の現場で実際に作業しながらヒントを探り、季節を問わず提供できる体制を目指す。
 三陸沿岸道が完成するなど交通アクセスが向上している一方、その利点を生かしたアピールも進んでいない。外国人観光客も戻り出しており、受け皿づくりが急務となっている。
 同社では各種産業を展開する事業者と連携し、気仙ならではの観光、体験の掘り起こしにも力を入れる方針。地域経済循環に向け、ポイントサービス新事業「大船渡さんぽ」を展開している一般社団法人大船渡地域戦略などとも歩調を合わせることにしている。
 伊藤社長は「観光を通して外から人を呼び込み、飲食店や第1次産業に経済が循環し、地域活性化に寄与できれば。まずは、観光資源の磨き上げに向け、苦労もあるかもしれないが、楽しみながら進めたい。今は情報量が豊富な分、趣向も多様化している。どこにマッチするか、ヒットするかは分からない。さまざまな角度から旅行を考えていかなければ」と話す。

 サイトに関する問い合わせは同社地域共創事業部(℡27・1114)へ。QRコードは別掲。