国内初のプラント本格稼働 ピーカンナッツ加工用設備 サロンドロワイヤル タカタ本店

▲ タカタ本店で本格稼働したプラント

 陸前高田市高田町の市ピーカンナッツ産業振興施設内に入る「サロンドロワイヤル タカタ本店」で、国内で初めて導入されたピーカンナッツ加工用のプラント(生産設備)が本格稼働している。同店を経営する㈱サロンドロワイヤル(本社・大阪市、前内眞智子代表取締役社長)は、現在栽培が進められている陸前高田市産ピーカンナッツの将来的な収穫、流通を見据え、設備を扱う地元スタッフの育成も図っている。(阿部仁志)

 

陸前高田産の収穫見据え

 

 同市が産業化を進めるピーカンナッツは、北米原産のクルミ科の実で、軽い食感で渋みがないのが特徴。アルツハイマー病予防やアンチエイジング(抗加齢)効果が期待できる健康・美容食品として注目されている。
 市は、東日本大震災からの農業再生、地方創生につなげようと、東京大学、サロンドロワイヤルと連携し、ピーカンナッツによる産業振興を目指す「ピーカンナッツ・プロジェクト」を発足。ピーカンナッツの普及拡大や産地化に向けた苗木の試験植樹・栽培の取り組みを進めている。
 国内最大規模でピーカンナッツの加工・販売を手掛けるサロンドロワイヤルは昨年7月、市が中心市街地に整備したピーカンナッツ産業振興施設内でタカタ本店をオープン。チョコレートやピーカンナッツ商品の販売スペースに加え、ピーカンナッツ加工用のプラントを置く工場を開設した。
 導入されたプラントは、ピーカンナッツの殻を割る「クラッカー」、殻をむく「シェラー」などで構成。ピーカンナッツに特化し、世界10カ国以上に収穫、洗浄、加工設備を提供している米国オクラホマ州の企業「Savage Equipment」(以下、サベージ)の製品を取り入れ、日本での導入は同店が初となった。
 プラントの本格稼働にあたり、同店では今月11日~13日の3日間、サベージ海外事業部のエンジニア、ジェシー・ディアスさんによる技術指導が行われた。担当スタッフの菅野太陽さん(21)=住田町世田米=と大和田伊玖磨さん(23)=大船渡市盛町=の2人が説明を受け、各機器の役割や使用上の留意事項、整備方法などについて学んだ。
 菅野さんは「初めて扱う機械の使い方を覚えるのは大変だが、やりがいがある。一つずつ覚えていきたい」と、大和田さんは「形のいい商品を生産し、陸前高田のピーカンナッツを全国に認知してもらえるよう頑張りたい」と意気込んでいた。
 ジェシーさんによると、同店の設備は1分間に最大およそ400個の殻を割ることができ、1日当たり約1㌧分を処理することが可能という。砕いた殻を四つのサイズに分けて回収する工程を自動化できるのも特徴で、大きな殻はチョコレートの原料に、小さな殻はジャムなどに利用できる。
 サロンドロワイヤルで扱うピーカンナッツは、これまでは殻が砕かれた状態で輸入されたものを使っていたが、同店のプラントが稼働したことにより、国内で加工したナッツを仕入れられるようになった。殻をむいたばかりのナッツは「鮮度が良い」とし、製品の品質向上にもつながる。
 当面は輸入された実を加工するが、将来的には陸前高田市で収穫される実も扱い、生産、加工、流通、販売を一体的に行える〝国内唯一〟の環境を整えていく。
 前内社長は「さまざまな方々の協力のもとプラント稼働にこぎつけ感無量という思い。新しい産業のワンステップと捉え、地域の方々が活躍できる場の創出にもつなげていきたい」と先を見据える。