津波「最大クラス」反映 ハザードマップ全戸配布 全面的な更新は10年ぶり
令和5年4月21日付 1面

大船渡市は、昨年、県が公表した最大クラスの津波浸水想定をもとに新たな津波ハザードマップを作成し、20日付の市広報などとともに全戸配布を進める。全面的な更新は、平成25年以来約10年ぶり。最大クラスの想定では、東日本大震災時に浸水を免れた盛町北部や三陸町越喜来の一部なども津波到達が予想される。作成に合わせ、避難場所も一部変更した。三陸町綾里地区には、綾里川が洪水浸水想定区域に指定されたことを受け、新たな水害ハザードマップを配布する。(佐藤 壮)
津波ハザードマップは、震災後の平成25年度に作成し、市内全域に配布。4年前は、字句など軽微な修正で印刷・配布はせず、ホームページデータのみ更新した。全面的な更新、配布は約10年ぶりとなる。
A1判(縦約84㌢、横約59㌢)のカラー両面印刷。表面は市全体地図と第一避難場所、最大クラスの浸水想定や東日本大震災と明治・三陸・チリの各津波時の浸水範囲に加え、津波避難時の「心得」も明記。市ホームページやFMねまらいんといった情報入手先などを掲載している。
裏面は▽盛・大船渡・猪川▽末崎▽赤崎▽綾里▽越喜来▽吉浜──の6種あり、第一、第二避難場所とその標高、最大クラスの浸水想定範囲、東日本大震災や過去の津波浸水範囲などを載せている。
最大クラスの津波浸水想定は、日本海溝・千島海溝沿いの最大クラスの断層モデルや、過去に県内で発生した最大クラスの津波を対象とした。「なんとしても人命を守る」の基本理念下で、最大クラスの津波襲来や悪条件下を前提に浸水区域や水深を公表。潮位は震災時より1㍍程度高く、広域地盤沈下や防潮堤の破壊も計算に加えた。
市内代表地点の最大津波水位は、綾里白浜海岸のTP(東京湾平均海面)24・7㍍が最高。大船渡湾内は6・5~8・8㍍、その他は12・6~19・7㍍となっている。
新たなハザードマップは、東日本大震災の浸水範囲と、最大クラスの浸水想定範囲をそれぞれ確認できる。震災時よりも浸水想定エリアが広がり、特に盛町北側や三陸町越喜来の一部は国道45号まで到達する。同町綾里も広範に及ぶ。
地区別には、最大クラスの津波第一波が到達する想定時間も明記。綾里白浜海岸が17分で、唯一20分未満となっている。最大波到達までの時間は、吉浜・千歳漁港が30分と早く、その他は32~46分と想定する。
作成と合わせ、津波の避難場所も一部変更。津波から逃げるための高台などを設定した第一避難場所のうち、浸水域に入った三陸町越喜来のローソン大船渡越喜来店駐車場は除外した。
津波が引いたあと、避難生活を送る第二避難場所は、末崎町の船河原公民館と碁石地区コミュニティセンター、三陸町綾里の石浜地区多目的集会施設、綾里漁村センターと野々前しおさい会館を廃止。いずれも最大クラスの想定では、浸水域に入った。末崎町では、新たに三十刈地域公民館を追加した。
今回廃止した第二避難場所について、昨年7~8月の説明会時点では「津波による被害の恐れがなくなり、施設が使用可能な場合に限る」と条件付け、引き続き避難場所として活用するとしていた。廃止の理由について、市防災管理室は「説明会で『誰が使用可能かどうか判断するのか』などの意見が出た。改めて地元関係者と協議し、見直した」と説明する。
水害ハザードマップは令和3年度に全戸配布しているが、今回は綾里地区のみ更新。昨年、県が綾里川の洪水浸水想定区域を指定し、最大規模となる1000年以上に1回の豪雨では川沿いや低地などの広範囲にわたる浸水、流域の河岸浸食といった被害が発生するとしている。市は浸水想定域を分かりやすく示し、早期避難への活用を促す。
市はハザードマップの全戸配布を進めるほか、市ホームページでも公開。「自宅のみならず通勤、通学先においても、日ごろから避難場所や避難ルートを確認してほしい」と呼びかける。QRコードは別掲。

水害ハザードマップ

津波ハザードマップ