奨学金返還支援へ補助金 市内事業所就職者に最大月1万円 人材確保、若者定着見据え

 大船渡市は、今月以降に市内事業所に常用雇用された35歳未満を対象に、奨学金返済の一部を補助する。申請年度内に返還する奨学金の2分1以内で、上限は月額1万円。返還時期内の最大36カ月間助成する。申請開始は5月1日(月)。業種を限定せず、民間事業所を中心に就職する幅広い若者を対象とすることで、市は産業振興のみならず、人口減少対策などの面から活用に期待を込める。(佐藤 壮)


 この補助制度は、本年度新たに創設。市の産業を担う人材確保や若者の定着促進を目的としている。
 交付条件は▽雇用された日の年齢が満35歳未満で、市内に住所があり、3年以上市内に定住意思がある▽奨学金の貸与を受けて大学などを卒業し、返還義務がある▽今年4月1日以降、常用雇用されている(公務員や、3年以内に転勤で市外に住所を移す可能性がある人は除く)▽県など他の奨学金返還支援制度を利用していない──などの全てを満たしていること。
 大学に加え、短大、大学院、高等専門学校、専修学校の専門課程も含む。市への若者定着を目的とし、市外出身者も対象。就職先は、本社か主事業所が市内にある企業などへの勤務を求める一方、風俗業などを除き、業種限定はない。市内の企業・事業所所属で、市内住所から市外の営業所に通勤する場合も、補助金の対象となる。
 独立行政法人日本学生支援機構の第一種・第二種奨学金や市育英奨学金、自治体から借りている奨学金が対象。最大36カ月間で、返還が終了した場合や、年齢が35歳に達した場合は、その時点で終了する。
 補助金額は返還する奨学金額の2分の1以内で、1年あたりの上限額は年間12万円(1カ月あたり1万円)。対象の奨学金であれば、返還額を合算して申請ができ、利息も含まれる。返還方法が年賦、半年賦の返還者も申請できる。繰上返還分は対象外となる。
 申請期間は5月1日~9月29日(金)。本年度は20人程度の補助を見込み、予算上限到達時は、期限前に受付を締め切る場合がある。
 日本学生支援機構から今年3月まで奨学金貸与を受けて大学を卒業し、翌月から対象事象所に就職した場合、奨学金の貸与月の翌月から数えて7カ月目の10月から返還が始まる。この場合は申請期間内に手続きして交付決定を受け、返還開始の10月~翌年3月の6カ月間に返還した奨学金額が補助金の対象となる。以降、年度ごとに申請が必要となるが、2年間は12カ月分の補助を受け、最終年度は6カ月分の受給も可とする。
 市内出身者の大学生らは、ほとんどが自宅外からの通学となる中、多くが奨学金を利用。貸与額は数百万円規模に上り、返還時は10年以上にわたり月額平均で1万円超を支払うケースも少なくない。
 大船渡市人口ビジョン(改訂版)によると、市内人口は、昭和55年の5万132人(合併前の大船渡市と三陸町の合算)をピークに減少。年少人口(15歳未満)と生産年齢人口(15~64歳)の減少が著しく、現在は3万人台となった。
 減少の主因は、若年層を中心とした大都市圏等への転出。高校までは地元にいても、進学や就職で8~9割が都市部に出て、その多くは戻ってこないため、出産適齢期の若年世帯や出生数が減少している。
 東日本大震災以降は、復興需要に支えられ、建設業と関連産業を中心に活発な経済活動が展開され、人口減少もやや緩やかになっていたが、各種大型事業の完了とともに、今後は〝加速〟が予想される。生産年齢人口の減少は、産業活動の停滞とどまらず、地域コミュニティー維持などへの影響も懸念される。市はこうした制度を通じて、若年層に市内就職を選択肢の一つとして入れてもらい、定着につなげたい考え。
 補助金に関する問い合わせは、市商工課商工・労政係(℡27・3111内線109、111)へ。