第73回全国植樹祭いわて2023/即位前の天皇皇后両陛下ご訪問 地ノ森仮設住宅団地の思い出胸に 大船渡市盛町・大塚木工の大塚利夫さん(96) おもてなし広場に出展
令和5年5月30日付 7面
6月4日(日)に陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園で開かれる「第73回全国植樹祭いわて2023」に合わせ、道の駅「高田松原」に設けられる「おもてなし広場」。出展する大船渡市盛町・大塚木工の大塚利夫さん(96)は、特別な思いを寄せる。東日本大震災で被災し、大船渡町の地ノ森仮設住宅で暮らしていた平成23年8月、即位前の天皇皇后両陛下が励ましのため同住宅団地を訪問された。式典に両陛下が出席される中、当時を思い出しながら準備を進め、気仙スギを生かした木工製品で、来場者を歓迎する。(佐藤 壮)
12年ぶり〝同じ場所〟へ
工場内には、気仙スギをはじめ、地域の素材を生かした製品が並ぶ。「木目を生かし、いかにきれいなものを作るか」。繊細な模様を表現するすべての工程を、今も大塚さん一人で担う。
盛町出身で、仙台などで職人経験を積んだ大塚さんは、昭和35年のチリ地震津波で大船渡で建築需要が高まったのを機に、盛町内に建具工場を構えて独立した。船舶の家具製品などの受注がひと段落し、気仙スギを生かした木工品に取り組み出した平成23年3月11日、津波で自宅兼工場が全壊した。
当時すでに80代で、家族に高齢者をはじめ要援護者がいることも選定基準となった地ノ森仮設住宅に入居。市内では最も早く入居が始まった半面、設備が十分に整っていなかった。
住田町内の業者による厚意で気仙スギを確保し、市内業者の工場を借りて、下足入れ約30個を制作。希望した入居者に配った。木を通じて、入居者間の生活を支えた。
同年8月5日、当時の皇太子ご夫妻は、甚大な被害を受けた大船渡町内を回った後、同団地を訪問された。集会場前には多くの住民が見送りで並び、わずかではあったが、交流の時間があった。大塚さんは「やさしさを感じた。ありがたいと思った」と振り返る。
その後、かつての自宅敷地内に整備されたプレハブの仮設施設で木工職人としての仕事を再開。被災した工場から取り出した道具に加え、支援で寄せられた中古の機械を生かした。さまざまな製品受注に応えたほか、産業まつりなどへの参加も重ねてきた。
7年半余り仮設住宅に暮らし、平成30年秋、大船渡町内に自宅が完成。仮設工場のプレハブ施設は買い取り、今は〝本設〟として使用する。
被災後、仕事を一度もやめようと思ったことはない。「ここに来るのが楽しみ。何かを作ろうという思いになるから」と笑う。
昨年12月、おもてなし広場に関する案内文書が送られてきた。「木の商売をしているし、やはり、直接お会いできることはなくても、12年前を思い出す」と出展を決め、ティッシュボックスやペン立て、おしぼり置き、コースターなど会場に持ち込む製品を選んだ。
「どんな素材も、むだになることはない」。気仙スギの端材を生かし、広場に訪れた人々にプレゼントするストラップも仕上げた。「津波で被災し、96歳になっても現役で頑張っていることを分かってほしいから。お客さんとの触れ合いも楽しみ」と、思いを込める。
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おもてなし広場は、本県の森林・林業や観光などの展示PR、東日本大震災からの復興に関する情報発信、県産品の販売等を行う場として、同祭の県実行委員会が設置。ブースは▽復興岩手▽岩手の森林・林業▽岩手の木工品▽岩手の魅力発信▽岩手の特産品▽臨時郵便局▽次期全国植樹祭・全国育樹祭──があり、気仙からは陸前高田市7団体、大船渡市4団体、住田町1団体が参加を予定している。





