地元開催に感慨ひとしお 第25回全国植樹祭参加の菅野さん 記念品のシャベル大切に保管

▲ 49年前の全国植樹祭で使用したシャベルを手に持つ菅野さん

 陸前高田市の高田松原津波復興祈念公園で4日、本県では昭和49年以来2度目となる全国植樹祭が開かれた。同市気仙町の菅野裕司さん(69)は、49年前に旧松尾村(現八幡平市)で開かれた第25回大会に出席し、当時の記念植樹で使ったシャベルを今も大事に保管している。社会人になったばかりだった当時を振り返りながら、「開催地が一周し、地元で開催されたということで感慨深いものがある」と特別な思いに浸る。(阿部仁志)


 菅野さんが所持しているシャベルは長さ33㌢、幅最長10㌢ほど。ステンレス製の刃の部分には「第25回全国植樹祭記念 岩手県」と刻印がある。
 49年前、菅野さんは市職員になったばかりで、第25回全国植樹祭には、県内の「20歳代表」という枠で出席したという。「はじめはあくまで仕事として引き受けた」が、記念植樹で1万人以上の参加者とともに苗木を植え、天皇・皇后両陛下のお見送りに立ち会えたことが「うれしくて、来てよかったと思えた」と心境の変化があったという。
 その時に使ったシャベルを記念品として受け取り、自宅の倉庫に保管していた菅野さん。東日本大震災では大津波が自宅の玄関まで押し寄せたが、家や倉庫は無事だった。今年、かつて自身が参加した植樹祭が地元で開催されると知り、倉庫からシャベルを探して久しぶりに手に取った。
 全体の重さは約300㌘で、菅野さんは「手に持つと重量感があり、ずいぶん立派。木製の柄の部分も腐食せずきれいな状態で残っていてよかった」と語る。
 73回となった今回の植樹祭当日の様子は、県実行委が動画投稿サイト「ユーチューブ」でライブ配信した映像を視聴した。公私ともにたくさんの思い出が詰まった高田松原で、天皇・皇后両陛下が苗木の「お手植え」、樹木の種子の「お手まき」をされる様子を半世紀前の光景と重ねた。
 「若かったあのころと植樹祭に対する印象が違う。今回の植樹祭で植えられた苗木や種が、立派に育ってほしい」と願う菅野さん。シャベルは、これからも自宅で保管し、貴重な記憶をつなぐ〝財産〟として残す。