30周年への感謝こめて 人形劇のポレポレ 結成記念公演で新作発表(別写真あり)

▲ ネズミのヤカちゃんや人間の夫婦の人形が登場し、さまざまな手法で来場者を楽しませた人形劇

 陸前高田市の人形劇グループ「ポレポレ」(馬場幸子代表)の結成30周年記念公演は11日、米崎町の米崎地区コミュニティセンターで行われた。約80人の観客を迎え、新作劇の『番ねずみのヤカちゃん』を披露。東日本大震災を乗り越えて公演を続けてきた集大成を披露し、「これからも子どもたちの笑顔のために」と活動継続を約束した。(阿部仁志)


 ポレポレは、平成4年に市内の子育て中の女性らで発足。人形や小道具、舞台セットをすべて手作りし、市民芸術祭や市内外の保育所、学校、図書館などで公演してきた。子どもたちの豊かな心を育んでいるとし、18年には東海社会文化賞(東海社会文化事業基金主催)を受賞した。
 23年3月の東日本大震災の大津波では、高田町内にあった稽古場とともに劇の道具が流失し、メンバー3人が犠牲となった。残されたメンバーらも家を流されるなど被害にあったが、同年11月に市内で集まり活動継続を決意。各方面からの支援を受けながら道具を一からそろえ、翌年から公演活動を再開し、現在に至っている。
 今回の記念公演に向けては、これまでの30年で培ってきた経験、技術を発揮できる新作を届けようと、メンバー8人が一致団結。昨年から準備を進め、この日の本番を迎えた。
 記念公演は市と市教委、市芸文協、市社協、東海新報社などが後援。会場には、子どもから高齢者まで幅広い世代の地域住民が集まった。冒頭あいさつで馬場代表がこれまでの活動を振り返り、多くの来場に感謝を述べた。
 披露した『番ねずみのヤカちゃん』は、とある夫婦の家に隠れてすむネズミの家族のうち、4きょうだいの末っ子ネズミの「ヤカちゃん」が主役。小さくてかわいらしいネズミたちが登場すると、最前列に座った子どもたちが「ネズミさん、こっち来て」と明るい声をあげた。
 「大きな声を出してはいけない」と言われたのに〝やかましい声〟を出してしまうヤカちゃんや、ネズミを捕まえようとする夫婦とヤカちゃんのユーモアあふれるやりとりに、来場者の笑顔が広がった。
 ストーリーに影絵や歌を織り交ぜたり、家に泥棒が入ってくる時の恐ろしさを光の演出や声色で表現するなど、随所でポレポレならではの技が光った。
 同町の村上柚月ちゃん(5)は「ネズミがとてもかわいかった」と大満足した様子。母の成美さん(33)は「小さかったころ自分もポレポレの人形劇を見ていた。絵本とは違った楽しさがあり、これからも活動を続けてほしい」と願った。
 同コミセンホワイエには、震災後に公演してきた人形劇の人形やこれまでの歩みを紹介する掲示物も展示された。
 馬場代表(63)は「きょうを迎えられてほっとしている。これまでお世話になった方や、震災前からの仲間にも来て見てもらえたのがうれしい。物語の世界に入り込んでいる時の、子どもたちの表情が好き。これからもできるかぎり公演を続けていきたい」と話していた。