高原も観光シーズンに 種山で山開き 4年ぶりに通常開催で(別写真あり)
令和5年6月13日付 1面

住田町や奥州市などにまたがる種山高原の山開きは11日、同高原の物見山中腹にある「星座の森」で行われた。あいにくの空模様となったが、4年ぶりの通常開催となった今年は神事やハイキングに加えて、郷土芸能などの催しも行われ、多くの人でにぎわった。種山高原もいよいよ夏の観光シーズンに入り、キャンプや散策などでのさらなるにぎわいが期待される。(清水辰彦)
北上高地の南西部に位置する種山高原は物見山、大森山、立石などの総称で、東西11㌔、南北20㌔に及ぶ。緩やかな稜線の準平原地形と冷涼な気候から、藩政時代は馬の放牧地として利用された。
宮沢賢治がこよなく愛したことでも知られ、風景や気象を題材に童話『風の又三郎』『種山ヶ原』などを残した。賢治作品の源泉となった岩手の自然景観「イーハトーブの風景地」の一つとして、物見山も国の史跡名勝天然記念物に指定されている。
山開きは、住田町と奥州市で構成する種山高原観光協会(会長・佐藤弘美奥州市江刺総合支所長)が主催。自然を生かした憩いの場、観光地が整備された種山の発信などを図ろうと毎年開催している。
神事は例年、キャンプ場で行われてきたが、昨今のアウトドアブームを背景としてキャンプ場が混み合っているため、今年は奥州市側にある「星座の森」に初めて会場を移して実施した。
新緑に包まれた会場が大勢のキャンプ場利用者でにぎわう中、両市町の行政や観光、商工団体関係者ら約20人が出席して神事が執り行われ、シーズン中の安全を祈願。
佐藤支所長は「宮沢賢治がこよなく愛したこの種山高原で、雄大な自然を満喫していただきたい。この種山高原が多くの方々に愛され、県内外から足を運んでいただければ」とあいさつした。
神事後、住田町のすみた森の案内人の会(吉田洋一代表)がガイドしたハイキングでは、小雨の中、レンゲツツジの朱赤色が映えるなど初夏の装いが広がっている物見山の山頂を目指して歩いた。
昨年に続いてハイキングに参加した平野幸一さん(74)=奥州市江刺=は「種山高原は自然がいい。あいにくの雨だが、楽しみたい」と話し、霧に覆われた幻想的な光景の中で散策を楽しんだ。
山開き会場となった「星座の森」ではこの日、両市町の団体による踊りや郷土芸能披露、ストラックアウトやクッブ体験のアトラクションコーナー、売店開設、福引もちまきなども行われた。
令和2年、3年は新型コロナウイルスの影響により神事のみ、昨年もやや規模を縮小しての山開きとなったため、通常開催は4年ぶり。事務局によると、この日は地元内外から約300人が来場。降雨の影響もあり、昨年より200人ほど少なかった。