年度内にガイドライン 大船渡駅周辺・防潮堤活用の景観づくり 追悼施設との調和など見据え
令和5年6月15日付 1面

大船渡市は、大船渡駅周辺地区の防潮堤を活用した景観づくりに関し、年度内のガイドライン策定を目指している。昨年~今年にかけてタイルアート展示で関心を集め、別団体による「不思議アート」で彩る取り組みも進む。地区内のみなと公園では市が追悼施設を整備する方針で、景観とのバランスが求められる中、市は希望団体とのスムーズなやりとりなどでのガイドライン活用を見据える。全国的にも珍しいといい、今後の動きが注目される。
(佐藤 壮、2面に一般質問の主なやりとり)
ガイドラインの策定方針は、14日に行われた大船渡市議会一般質問のうち、佐藤優子議員(光政会)に対する答弁で市当局が明らかにした。
金野尚一都市整備部長は「防潮堤の利活用は、大船渡駅周辺地区のにぎわいや海沿いの景観創出につながる。一定のルールづくりは不可欠。市民や団体と意見交換を行いながら、本年度をめどにガイドラインを策定する」と語った。
市内の一般社団法人が中心となった三陸ブルーラインプロジェクトでは、昨年秋の取り組みに続き、今年3~5月には夢海公園沿いの防潮堤635㍍にタイルアートを飾った。アート作品の制作には、幅広い年代の市民が関わり、多くの市外在住者が資金提供などで協力。3月11日のイベントや5月の連休中などには多くの見物客が訪れ、にぎわいが生まれた。
また、昨年12月には商工会議所や市観光物産協会、県建設業協会大船渡支部、まちづくり会社、各種国際奉仕団体などの代表者らで「大船渡をアートで飾るプロジェクト実行委員会」が発足。防潮堤などに人の目の錯覚を利用した〝不思議〟な絵をシートで貼付し、観光資源として活用する事業を見据えている。
一方、市は今年4月、来年3月の完成・除幕式を目指す東日本大震災追悼施設整備方針を策定した。場所は「みなと公園」とし、碑かモニュメント、取り外し式の芳名板、過去の津波高表示、施設案内、避難誘導標識などを配置する。被害状況や追悼、後世へのメッセージ、復興の歩みなども記すほか、犠牲者の氏名掲示は、通常時はQRコードの読み取り式で、毎年3月11日に芳名板を設置することにしている。
県による同公園整備では、防潮堤を挟むように盛り土をし、高さ7・5㍍の築山を造成。頂上には、大船渡湾内を眺望できる「展望広場」がある。公園から茶屋前橋付近までの約500㍍間は、防潮堤に沿って盛り土、植生を施し、街並みを感じながら散策できる道がある。
一般質問で金野部長は「追悼施設の整備目的である震災で犠牲になられた方への深い追悼、記憶を風化させることなく未来への教訓とする象徴的な場とするため、今後の防潮堤利活用に向け、管理者である岩手県や庁内の関係部局と検討を進めている」とも答弁。
同公園整備の目的である「海とまちのつながり」を感じられるようにしつつ、すでに設置されている「鎮魂愛の鐘」や、追悼施設の整備目的をふまえた景観づくりを進める方針も示した。
再質問の答弁で伊藤喜久雄土地利用課長は「全国的にあまり事例がなく、その部分で苦慮する部分はある」などと発言。昨年から今年にかけて防潮堤活用で許可をした際の基準などをもとにしながら、ガイドライン策定につなげる姿勢も示した。
盛り込む具体的な内容は今後の調整としながらも、伊藤課長は「県などとの協議では、追悼施設の整備目的に合わせた景観づくりに、防潮堤の区域を分けるゾーニングを検討している。追悼施設に近いエリアは整備目的に配慮したものとし、追悼施設から離れたエリアは、ある程度自由な利活用ができるといった内容などが考えられる」とも述べた。