自然が育む命の営み モリアオガエルの卵 大量に 五葉地区内の水田周辺で確認

▲ 藤井さんの田んぼで確認された卵塊

産卵中のモリアオガエル(15日)

 住田町の五葉地区内にある田んぼ周辺で、数十個におよぶモリアオガエルの卵が産み付けられている。気仙地方では珍しいこの光景に、田んぼ所有者の藤井洋治さん(74)は「こんなにたくさんの卵は初めて見た」と驚きつつも、豊かな自然の中で繰り広げられる生命の営みを温かく見守っている。
 日本固有種のモリアオガエルは、県内では低地から高地までほぼ全域に分布。県のレッドデータブックでは、「優れた自然環境の指標となる種」「本県を南限または北限とする種」に該当する「Dランク」となっている。
 5月下旬~7月上・中旬にかけての産卵期に池や沼の周辺に集まり、水面に張り出した木の枝に白い泡状の卵塊を産み付ける。泡の中には、薄い黄色の卵が300~800個ほど入っており、オタマジャクシが生まれるまで、この泡が卵を守る役割を果たす。
 県内では、大揚沼(八幡平市)のモリアオガエルとその繁殖地が国の天然記念物に、白沼(雫石町)の繁殖地が県の天然記念物に、それぞれ指定されている。
 住田町では、町教育振興基本計画で自生地の保護や町天然記念物指定の検討を掲げている。
 藤井さんの田んぼは、五葉地区公民館から北に3㌔ほど進んだ場所にあり、遊休農地を6~7年前に復活させた。その後、4年ほど前に初めてモリアオガエルの卵を発見。これ以降、卵塊は見つけても二つほどだったというが、今年は17㌃ある田んぼ周辺の木々の至る所に産み付けられており、多い木では50個ほどの卵塊が確認された。
 陸前高田市立博物館の浅川崇典学芸員によると、住田町や陸前高田市内では複数カ所でモリアオガエルの自生が確認されているが、これほど多くの卵塊が産み付けられるのは珍しいという。
 今週初めごろから一気に増えたといい、藤井さんも驚きを隠せない様子。一方で「自然との共存の中で、自分のできる農業を楽しんでいる。モリアオガエルもすむこの環境を大切にしたい」とも語り、子どもたちにもこの光景を見学してもらうなど、自然を活用した〝体験学習〟の開催も考えている。(清水辰彦)