新副市長に引屋敷氏起用 県との連携強化へ7月から 市議会 無記名投票で可決

▲ 無記名投票で行われた新副市長同意を巡る採決

 大船渡市議会6月定例会の最終本会議が20日に開かれ、新副市長に県文化スポーツ部文化スポーツ企画室企画課長の引屋敷努氏(52)=盛岡市=の選任同意を求める追加議案を可決した。渕上清市長は「県との連携をより強固に」などと強調。一方、議員側は、市長が採決前にこの提案を巡って各議員を回ったことを問題視する動きが広がり、無記名投票で行われた。新副市長の着任は7月1日付で、市職員出身で3年3カ月間務めた現副市長の志田努氏(63)は今月末で退任する。(佐藤 壮)

 

引屋敷 努氏

 提案にあたり、渕上市長は「市役所の機動力をさらに高め、陸前高田市や住田町と連携し、広域的な視点に基づく施策展開を図りたい。地域社会の枠を超え、県との連携をより強固なものに発展させたい」と発言。
 質疑では議員5人が渕上市長と論戦を交わした。渕上市長は、内陸部を結ぶ道路ネットワークや、県立大船渡病院を核とした地域医療の充実にも意欲を示したほか「人選は私たちが立ち入る分野ではなく、なぜ招聘するかを伝え、県にお願いした」「知事や両副知事に会った際には、お願いしていた。実際には庁外の複数人と相談した経緯はあるが、結果的には相談にとどまった」と語った。
 複数の議員が、採決前の17日に、渕上市長がほぼ全議員を訪ねた行動を問題視した。渕上市長は「私自身の口から人となりを説明できればと思った。考えをくつがえそうとしたのではない」と答弁。「行動が違った形で受け止められたのであれば、反省したい」とも語った。
 本来、議決は起立採決で行われるが、議員4人からの申し出を受け、無記名投票で行われた。議会事務局によると、議員2人以上の申し出があれば、無記名投票か記名投票を選択できる。
 無記名投票を求めた議員からは「市長が各議員を回ったことで、人によっては圧力に感じる。反対と思う人たちが反対できないのではないか」「採決時、目の前にいる市長の行動が影響してはならない」「自分の気持ちを純粋に出すべき」「(副市長選任について)相談を受けた人たちからの影響を考えた」などの声が聞かれた。
 議長を除く全18議員による採決では、賛成10票、反対8票となり、選任同意議案はきん差で可決された。渕上市長は選任に感謝を示した上で、引屋敷新副市長の正式な就任は7月1日付とし、6月末で志田現副市長が退任する方針も示した。
 副市長人事を巡っては、市が3月13日、志田副市長の同月末での退任を発表。前市長時から務め、任期は来年3月末までだが、昨年12月に就任した渕上市長の「新年度から新しい体制で」という意向を受け、「一身上の都合」として辞職願を提出したもの。渕上市長は4月以降、当面は副市長不在とする方針も示していた。
 しかし、同15日に行われた市議会定例会の最終本会議で議員から批判が続出。渕上市長は退任を撤回し、市議会6月定例会までに新たな副市長人事案を提案する方針を示していた。
 このほか、議決したのは条例関連議案6件や一般会計、国民健康保険特別会計、市簡易水道事業会計の各補正予算、市道路線の廃止、認定、原発事故に伴うあっせんの申し立てに関する議案など12件。本年度一般会計補正予算は、歳入歳出に4億2518万円を増額し、総額を215億1889万円とし、事業者や給食分野への支援策を盛り込んだ。
 また、佐々木菊夫氏(末崎町)が陳情した▽北里との土地売買契約は「契約解除」すべき▽北里の債務不履行によるアパート経営者への損害賠償を要求し、実現しなければ水産学部の三陸復帰を実現すべき▽千島海溝、日本海溝想定地震(津波)、綾里小学校の浸水対策を講ぜよ▽大船渡市三陸町の「三陸町」を変え、吉浜町、越喜来町、綾里町の呼称実現──はいずれも起立採決の結果、不採択となった。
 新副市長の略歴は次の通り。任期は7月から4年間。
 ▽引屋敷努氏(ひきやしき・つとむ)平成9年県職員採用。同28年総務部法務学事課主任主査、30年同同特命課長、31年同総務室同、令和2年県土整備部建設技術振興課建設業振興担当課長、4年ふるさと振興部学事振興課主幹兼私学振興担当課長、5年文化スポーツ部文化スポーツ企画室企画課長。盛岡市出身。東北大卒。昭和45年9月9日生まれ。