個別避難計画作成2・8% 市が現状示す 支援者確保など困難で低調
令和5年6月22日付 1面

陸前高田市は21日、災害時に自力避難が困難な避難行動要支援者の命を守るため、事前に支援者や避難方法を決めておく「個別避難計画」の作成状況を示し、作成済みは7人のみと要支援登録者の2・8%にとどまることが分かった。自治体による計画作りが努力義務化されてから2年余り。東日本大震災の教訓を踏まえ、実効性のある計画の確立が求められる一方で、支援者の確保やなり手不足など容易ではない課題がつきまとう。防災・減災のまちづくりに力を入れる同市が、災害弱者への対策にどう向き合うか、今後の動向に注目が集まる。
(高橋 信、2面に一般質問の主なやり取り)
同日開かれた市議会定例会の一般質問で、小澤睦子議員(新志会)が取り上げた。
市によると、避難行動要支援者としての市内登録者は5月1日時点で、要介護認定者37人、障害者130人、その他85人の計252人となっている。
このうち、個別避難計画を作成したのは、同日時点で7人。支援者の確保や支援体制の構築に時間を要していることなどから、作成しているのはごく一部にとどまるという。
国は東日本大震災で多くの高齢者や障害者が犠牲となった教訓を踏まえ、平成25年に災害対策基本法を改正。これにより市町村に避難行動要支援者名簿の作成を義務づけた。
陸前高田市の場合、独自に定めた要支援者支援制度に基づいて登録を進めている。同制度の要綱によると、申込書には氏名や住所、性別、生年月日、電話番号のほか、介護度や障害等級などの身体状況、世帯状況、家族構成、緊急連絡先などを記載する。本人の同意のもと、災害時には登録書に関する情報が自主防災組織や民生委員、社会福祉協議会、警察・消防などに提供される。
個別避難計画は名簿登録者の避難を手助けし、逃げ遅れを回避しようと、避難先や避難経路、支援者などをあらかじめ定めておくもの。本県などに甚大な被害を与えた令和元年の台風19号を受け、3年に災害対策基本法が改正され、それまで任意だった計画作成について、市町村に努力義務が課された。早期作成のために優先度を決め、高い要支援者については5年以内を目安に計画を作るよう促している。
計画や名簿は、要支援者を取り巻く災害リスクを整理するうえでも重要な役割を担う。一方で、障害や病気などの個人情報が扱われる抵抗感や人口減、高齢化を背景とした支える側の担い手不足など、さまざまな課題が考えられる。東日本大震災時は災害弱者を助けるため、民生委員や消防団員が犠牲となったケースもあり、支援者の負担や責任の大きさが低調な作成状況の背景にありそうだ。
佐々木拓市長は「今後は、ケアマネジャーなどの福祉専門職や社会福祉協議会、民生委員など日常の支援者、地域の住民と連携を図る。防災部局と福祉部局とが連携し、計画の作成に努力していく」と述べた。