「実現に向け働きかける」 国道343号新笹ノ田トンネル整備 市長が意欲示す 県の有識者会議始動受け

▲ 急カーブが連続し交通難所となっている国道343号の笹ノ田峠

 陸前高田市の佐々木拓市長は23日、同市と一関市を結ぶ国道343号の交通難所を抜本改良する「新笹ノ田トンネル」整備実現に向け、「今後も関係自治体と連携し、県、国などに対して働きかけを行う」と意欲を示した。県は今春、同トンネル整備の必要性を考える有識者会議を発足させ、今後は現道の対策や技術的な課題、地質状況などを段階的に検討する見通し。地元の悲願であるトンネルの一日も早い整備化へ期待が高まっており、市は引き続き実現への取り組みを推進する。(高橋 信、2面に一般質問の主なやり取り)

 

 新笹ノ田トンネルに関しては、同日開かれた市議会定例会の一般質問で、伊藤勇一議員(碧い風)が取り上げた。県が設置した技術課題等検討協議会の検討結果や今後の見通しを確認したうえ、「市民とともに早期整備実現への取り組みをすべきと思うが、具体的な考えはあるか」と尋ねた。
 市によると、1回目の検討協議会は3月に開かれ、委員らが現道の利用状況や笹ノ田峠付近の交通課題、地質状況を確認。今後は対策の必要性や技術的な課題、効果などを段階的に検討することとしている。
 笹ノ田峠は急勾配で道幅が狭く、カーブも連続する国道343号上の交通難所。特に冬期間は路面凍結などで事故の危険性が高まり、通行に支障を来している。
 東日本大震災後、国による復興へのリーディングプロジェクトとして整備された三陸沿岸道路は、令和3年12月に全線開通。青森県八戸市から宮城県仙台市までを結ぶ総延長359㌔で、三陸沿岸の縦軸がつながったことにより、沿岸と内陸との横軸整備による広域的な幹線道路ネットワーク構築の必要性が高まっている。国道343号は、県が誘致を目指している「国際リニアコライダー(ILC)」の部品を運搬する路線としても、重要性が増している。
 陸前高田市は同国道の沿線自治体とともに、新笹ノ田トンネルの整備や急カーブの解消などに関する要望活動を展開。平成26年には沿線自治体の民間団体が中心となり、トンネル整備実現に向けて9万人を超える署名を集め、国、県に提出した。
 28年には、陸前高田市を含む気仙地区や内陸南部の約40の関係団体が「新笹ノ田トンネル整備促進期成同盟会」を設立。毎年、県にトンネル整備の早期事業化を求める要望書を提出し、啓発活動も実施してきた。
 こうした状況下、県は高田松原津波復興祈念公園内の震災津波伝承館が盛況であることや、政府の本年度ILC関連予算が前年度当初から倍増されたことなど、国道343号やILCを取り巻く状況が変化したことから、新トンネルの必要性を検討する段階にあると判断。有識者会議を立ち上げるに至った。
 佐々木市長は「今後もこれまでと同様、要望活動を実施していきたいと考えている。沿線自治体と連携して県や国、県選出国会議員、関係の県議会議員などへの働きかけも行っていきたい」と述べた。