震災で流失の高田高実習船漂着10年 節目に友好の誓い新た 市と米姉妹都市(別写真あり)

▲ 友好の証しとなるタイルアートのレプリカを手にする両市の関係者

 東日本大震災の津波で流された陸前高田市の県立高田高校の実習船「かもめ」が米カリフォルニア州のクレセントシティ市に漂着して10年の節目を迎え、28日、陸前高田市立博物館で記念行事が開かれた。漂着・返還を機に同市と交流を続けるクレセントシティ市の関係者も出席。両市の絆を題材にしたタイルアートのレプリカが披露され、出席者が末永い友好を誓い合った。(高橋 信)

 

市立博物館で記念行事

 

 両市の関係者約50人が出席。クレセントシティからは前市長のブレーク・インスコアさん(61)、デルノーテ郡議会議員のクリス・ハワードさん(52)、同市や同郡教育長のジェフ・ハリスさん(53)らが臨んだ。
 陸前高田市教委によると、タイルアートはクレセントシティ市から依頼を受けた地元アーティストのハーリー・マンガーさん(80)、ジル・マンガーさん(64)夫妻が制作したもの。2㍍四方の大きさで、世界的に有名な浮世絵師・葛飾北斎の代表作をモチーフに、かもめを掲げる両市の高校生、クレセントシティの灯台、陸前高田の奇跡の一本松などが描かれている。
 同じ作品が今年4月、クレセントシティにも設置され、陸前高田ではかもめの現物が展示されている市立博物館の敷地内に常設されることとなった。実物は今後、同館に届く予定で、この日の式典ではレプリカが披露された。
 式典にはマンガーさん夫妻も出席。ハーリーさんは「制作の機会をいただき本当に感激している」と喜び、ジルさんは「友情を表したタイルアートを楽しんでもらいたい」と願いを込めた。
 高田高海洋システム科の養殖実習などで使われていたかもめは、発災から約2年後の平成25年4月、米西海岸のクレセントシティに漂着。地元のデルノーテ高生らの尽力で同年10月に高田高に返還され、これをきっかけに双方の高校生が訪問し合うなど交流が始まった。両校は29年に国際姉妹校となり、30年には両市が姉妹都市協定を締結した。
 同科の安倍春奈さん(3年)は「デルノーテ高との絆が、高田高の生徒が国際的に活躍するきっかけとなった。マリンアテンダントになる夢に向けて、このつながりを機に世界中に進出したい。次の世代にもこのつながりが続いてほしい」と話した。
 かもめの第一発見者で、元保安官のビル・スティーブンさん(58)は、博物館エントランスに展示されている船を眺め、「陸前高田ではたくさんの友ができたが、きっかけとなったこの船と『再会』でき、とても感激している」と涙ぐんだ。
 クレセントシティの訪問団は29日まで市内を視察し、30日朝に帰国する。