犠牲者ゼロ目指し検討開始 県公表の最大クラス津波想定受け  市設置の有識者会議初会合 車避難のあり方も探る

 県が公表した最大クラスの津波浸水想定を受け、陸前高田市は津波避難計画策定に向けた検討に乗り出した。5日、有識者会議の初会合が市内で開かれ、来年度末を目標とする策定までのスケジュールや議論のテーマなどを確認した。今後は車避難のあり方や避難行動要支援者への対応を含め、犠牲者を減らすための課題を丁寧に洗い出し、腰を据えて議論していく。高齢化を背景に徒歩避難が困難な人が年々増えている一方で、車避難を安易に認めれば渋滞の発生が懸念され、逃げ遅れる可能性が高まる。市は会議での意見、提言を参考に、計画策定のスピード感よりも中身の実行性を重視しながら計画作りに取り組む考えだ。(高橋 信)


 同日開かれた「市津波避難計画策定アドバイザリー会議」の委員は、静岡大防災総合センターの牛山素行教授、東京大生産技術研究所の加藤孝明教授、岩手大地域防災研究センターの福留邦洋教授、東京大大学院総合防災情報研究センターの関谷直也准教授、市防災課の中村吉雄課長の5人。災害情報学や防災まちづくりなどに関する研究者らがそろい、委員長には牛山教授を互選した。
 同会議は少なくとも年3回開く予定。県の想定を踏まえ、車避難の是非やルールなどを含め、市民の命を守るための課題や対策をゼロベースで話し合い、市にアドバイスする。
 県は昨年9月、本県に最大クラスの津波が到達した場合の被害想定を公表。マグニチュード9クラスの日本海溝(三陸・日高沖)、千島海溝(十勝・根室沖)、東日本大震災の震源域と同じ東北地方太平洋沖の3地震をモデルに想定した。同市における最大震度は6弱、最悪のケースを想定した推計死者数は最大160人となっている。
 ただし、同想定では発災後すぐに避難した場合、市内死者数はゼロと示されており、重要性が増すのが避難行動のあり方だ。
 陸前高田市では東日本大震災時、車の渋滞が一部発生しており、市地域防災計画では避難手段について「原則徒歩」と明記している。避難場所が遠かったり、要配慮者がいるため、やむを得ず車で避難せざるを得ない場合、あらかじめ確実に避難するための方策を避難者自らが検討するよう求めている。
 一方、本県沿岸自治体の中では、住民の車避難を条件付きで容認する動きなどもある。
 陸前高田市の場合、大勢の観光客でにぎわう道の駅高田松原、震災津波伝承館が高田松原津波復興祈念公園内にあり、夏季には海水浴場が開設される。有識者会議では観光シーズンに地震・津波が発生した場合、どの程度渋滞するか推定するためのシミュレーションを行う予定。
 中村防災課長は「アドバイザリー会議では何が課題か、どのような対策を取り入れないといけないのか、短期間で答えを導き出すのではなく、じっくりと議論する場としたい。震災で甚大な被害を受けたまちとして、沿岸の他自治体にも有効な対策となるようなメッセージ性をもった計画を策定していきたい」と話している。