綾里と越喜来浪板を開設 三陸町の海水浴場 吉浜は今年も環境整わず 

▲ 15日に海開き式典を予定している白浜

 大船渡市は6日までに、市が開設者となっている海水浴場の開設方針を決めた。三陸町内の綾里(白浜)と越喜来浪板は前年度に続いて開設する一方、吉浜は海中環境の状況変化で安全確保が難しい現状を踏まえ、5年連続で見送りとなった。綾里と浪板の開設期間は7月15日(土)~8月13日(日)。海開き式典は、7月15日午前10時から綾里で行う。(佐藤 壮)

 

吉浜は海中の砂が陸上に打ち上げられ、急傾斜となっている状況などを踏まえ断念

 市が管轄する海水浴場は、三陸町の綾里、越喜来浪板、吉浜の3カ所。いずれも東日本大震災の津波で甚大な被害を受け、平成23年度以降は開設を見送り、関係機関と連携して防潮堤等の復旧・復興工事、海底がれきの撤去などの安全対策を進めた。
 29年度には越喜来浪板が市内、気仙で震災後第1号として海開きを実施。30年度は吉浜でも海水浴が可能となり、綾里も令和元年に9年ぶりに「海開き」を行った。同年の吉浜は監視体制が整わず、開設が見送られた。
 令和2、3年の綾里と浪板は、全国的な新型コロナウイルスの感染状況や、海水浴場での感染防止策の難しさなどを考慮し、海開きを見送った。昨年は、両海水浴場のトイレ、シャワー室に消毒用のアルコールを設置するなど感染防止を徹底しながら開設した。
 悪天候で遊泳禁止となった日などを除く実質的な開設期間は、浪板が27日間、綾里は26日間だった。浪板の客数は2501人で、令和元年の3237人から736人(22・7%)減少。綾里は1191人で、同年の1450人に比

べて259人(17・9%)少なかった。
 吉浜は今年も「遊泳想定エリアの安全性確保が困難」を理由に断念。波打ち際近くの海中の砂が陸上に打ち上げられ、急傾斜となっているほか、多数の石の露出や新たな海中がれき等が確認された。併設のトイレ・シャワー室は、閉鎖を継続する。
 吉浜は県内外から多くの海水浴が訪れる市の代表的な海水浴場として知られ、震災前年の平成22年には入込数が1万人を超えていた。震災で海岸の砂が流出し、石の露出や海中にコンクリートがれきなどが確認される状況になっていた。
 がれき等の撤去で平成30年度には遊泳区域を制限した上で開設。しかし、翌年以降も石の露出や新たな海中がれきの確認、さらに吉浜川からの落ち葉流入による海中の視界不良など、海水浴場として開設できない状況が続いている。
 市ではこれまで、復興交付金の活用による砂浜の災害復旧を検討。しかし、県が管理する農地海岸となっており、交付金は管理者による執行でなければ認められないため、事業実施に至らなかった。
 市では「誰でも安全に遊泳できるよう、早期復旧を」として、昨年度、対県要望に盛り込んだ。これに対して、県側からは「5年度予算で、がれき撤去および波打ち際の測量調査を実施予定」との回答を得た。市では本年度も「市民が一日も早い復旧を望んでいる」として対県要望に盛り込み、早期改善を求めている。