犠牲者減少へ教訓刻む 長部地区で防災研修会 4年ぶり開催 

▲ 4年ぶりの研修会で防災意識を高めた地区住民

 陸前高田市気仙町の長部地区コミュニティ推進協議会(菅野稔会長)は9日、同地区コミュニティセンター(漁村センター)で防災研修会を開いた。新型コロナウイルス禍の影響で4年ぶりの開催。同協議会役員が過去の津波被害や避難の重要性をテーマに講演し、住民たちが命を守る教訓を胸に刻んだ。11日で東日本大震災発生から12年4カ月。震災からの歳月の経過とともに記憶の風化が課題となる中、次の災害に備えた自主的な活動が今後さらに求められそうだ。(高橋 信)

 

きょう震災12年4カ月


 研修会は毎年3月に実施している地区独自の津波避難訓練と同じ日に開催しているが、新型ウイルス感染拡大以降、「3密」を回避するため見送ってきた。新型ウイルスの感染症法上の位置づけが季節性インフルエンザと同じ5類に引き下げられたことなどを踏まえ、開催を決めた。
 この日は、コミュニティ推進協議会や老人クラブの役員、民生委員ら約20人が参加。講師は同協議会副会長の菅野久平さん(74)が務め、「東日本大震災から学ぶべきこと」と題して講演した。
 菅野さんは明治三陸地震津波(明治29年)、昭和三陸地震津波(昭和8年)、チリ地震津波(昭和35年)、東日本大震災(平成23年)と、三陸沿岸を襲った津波災禍の被害状況を説明。震災時の津波がまちをのみ込む映像も流し、避難の重要性を伝えた。
 地震や津波発生時の心得として「防潮堤(堤防)は避難時の時間稼ぎに過ぎない」「津波時には金品にこだわるな」「常日頃から避難場所、避難ルートなどを検討、吟味しておくべき」と説いた。
 講演後は施設駐車場で、市消防署職員から消火器の使い方について実践で学ぶ消火訓練を行った。
 参加した佐々木多美子さん(72)は「高台から見た当時の津波のことを思い出した。災害はいつ起きるか分からない。いざ避難するときにすぐ行動できるよう普段から気をつけたい」と話した。
 広田湾に面し、広田湾産イシカゲ貝養殖の発祥地であるなど漁業が盛んな長部地区。同協議会によると、12年前の津波で約200戸が被災した。
 長部地区自主防災会は震災発生日前の3月第1日曜日を「防災の日」とし、平成26年から毎年避難訓練を実施。市内11地区のうち唯一、防災活動に関する必要事項をまとめた地区防災計画を策定しており、活動に力を入れている。
 市は今月5日、県が昨年公表した最大クラスの津波浸水・被害想定を受け、市津波避難計画策定に向けた検討をスタートさせた。車避難のあり方などを検討する有識者会議も動き出し、会議の議論の行方にも関心が集まる。
 同協議会の菅野会長(77)は「津波発生時は『自分の命は自分で守る』が大前提。あれから12年4カ月がたち、あっという間という感覚だが、教訓を忘れてはならない。人的被害を少なくするためにも訓練や研修会は大切だ」と強調した。