命守るすべ実践から学ぶ 津波避難や消防・防災 気仙両市の中学生が訓練など(別写真あり)

▲ 大津波警報を想定した避難行動を体験する生徒ら=高田松原

 東日本大震災から12年4カ月となった11日、陸前高田市内2中学校が合同の津波避難行動体験学習、大船渡市の大船渡中学校(須藤淳校長、生徒124人)が消防・防災訓練をそれぞれ実施した。生徒たちは命を守るすべを実践から学び、有事に備えることの大切さを改めて胸に刻んだ。(阿部仁志、菅野弘大)

 

2校合同で避難行動体験/陸前高田市

 

 陸前高田市の高田東中学校(伊東孝志校長、生徒169人)と高田第一中学校(菅野美保子校長、生徒188人)は同日、高田町内で3年生対象の津波避難行動体験学習を行った。生徒らが高田松原から夢アリーナたかたまでの避難ルート上にある危険箇所や避難時の注意点を確認し、自助や共助の意識を高めた。
 体験学習は、東日本大震災規模の災害を想定し、将来を担う生徒らが大切な命を守る基本的な行動について自ら考え、心構えを養う機会にしようと実施。令和3年に高田東中が単独で実施し、昨年から高田第一中と合同で行っている。
 この日は、高田東中の42人と高田第一中の63人、両校の教員らが参加。午後1時45分に宮城県沖を震源とするマグニチュード9・0の地震が発生し、大津波警報が発表された想定で避難行動を行った。
 指定時間には防災無線でサイレンが鳴り、津波警報周知用の「津波フラッグ」も掲揚。生徒らは、その場で頭を守る行動をとったあと、集団で高台に向かった。当初は避難ルートを歩く予定だったが、天候不順による雷や熱中症の危険があったため、防潮堤を越えたあとはバスで夢アリーナたかたまで移動した。
 高田東中の上野早穂さんは「地震が起きたときのことを頭の中でシミュレーションして行動した。家族や地域の人、大切な人を守れるように、経験をこれからに役立てたい」と気を引き締めた。
 高田第一中の及川詠さんは「災害は今日みたいな暑い日に発生するかもしれない。いざというときに水分補給できるよう備えることや、落ち着いて行動することなどいろいろ考えた」と話していた。
 夢アリーナたかたでは、菅野校長と同市の中村吉雄防災課長による講話のあと、釜石海上保安部による海の安全教室も実施。生徒らは、海水浴や釣りを楽しむ際に、岸から沖へ潮が強く流れる離岸流に気を付けることや、水難に遭ったときは水面に体を浮かすように工夫することなどを学んだ。

 

消防防災訓練で有事の対応学ぶ/大船渡中

 

訓練や講習に取り組み有事の対応を学ぶ生徒ら=大船渡中

 大船渡市の大船渡中学校では同日、消防・防災訓練が行われ、全校生徒が消火体験や救命講習を通じて、緊急時の適切な対応と知識を学んだ。
 訓練は、各種体験を通じて生徒、教職員の非常時対応の習得を狙いに毎年開催。大船渡消防署(小野田利文署長)が指導を行っている。
 同日は、3年生が心肺蘇生法とAED(自動体外式除細動器)を使った救命講習、2年生が火災実験、1年生が煙体験と消火訓練をそれぞれ行った。
 このうち、2年生は日常生活に潜む「トラッキング火災」について学んだ。この火災は、コンセントとプラグの隙間にホコリがたまり、そのホコリが空気中の湿気を吸収することで、漏電して発火する現象のことを指し、署員らが実際にその様子を簡易的に再現した。
 コンセントに差さったプラグにホコリを乗せ、霧吹きで湿気を与えると、少しずつ煙が発生し、生徒らは驚きの声を上げた。延長コードなどを束ねたまま使用すると、束ねられた部分に熱がたまり、ショートして火災につながることも学び、「大型家電などはコンセントが差さりっぱなしなことが多く、こまめに掃除をすることで火災のリスクを減らせる」という署員の説明に深くうなずいた。
 2年生はこのほか、2本の棒と毛布などで担架を作り、傷病者を運ぶ体験にも取り組み、有事に役立つ行動に理解を深めた。
 平野真彩さんは「火災が起きる原因が身近にあることを知って怖いと思った。家のコンセントにホコリがたまっていないか確認して、火災に気をつけて過ごしたい」と話していた。