シンガポールで学び深めて 今月下旬から高田高生を派遣 国際性に富む人材育成 市が新規事業

▲ 現地コーディネーターとのリモートによる打ち合わせで滞在中の計画を話し合う生徒

 陸前高田市は今月下旬から来月初旬まで、県立高田高校(菅野幸貴校長、生徒344人)の生徒12人をシンガポールに派遣する。東日本大震災をきっかけに結ばれた同国との友好関係を生かした新規事業。次代を担う高校生に多様性を認め合う共生社会の意義を学び、国際性を養う機会を提供する。(高橋 信)

 

 訪問するのは2、3年生の12人。27日(木)に同市をたち、8月2日(水)に戻る。11日は高田高で、現地での活動をコーディネートするシンガポール在住の日本人とオンラインで打ち合わせし、滞在中の活動などについて検討した。
 期間中は自閉症の学生が通う学校でグループワークや共同制作を行い、交流を深める。このほか博物館の見学や市街地の散策を予定し、ホームステイも体験する。
 大友柊平さん(3年)は「現地の人たちと直接交流できる貴重な機会。シンガポールは共生社会の理解が進んでいると聞いており、現地で学びたい」と意欲を見せた。
 管理栄養士を目指しているという村上岬さん(同)は「シンガポールの食文化などに関心がある。初めての海外で不安もあるけど、積極的に学習したい」と話した。
 シンガポールは震災後、公共施設の整備費を補助するなど、陸前高田市への物心両面の支援を展開。市は東京五輪・パラリンピックで、同国の「復興ありがとうホストタウン」「共生社会ホストタウン」になり、支援への感謝を発信した。令和3年12月には、高田町の市コミュニティホール前にシンガポール政府公認の「マーライオン像」が建立された。
 さらに市は震災後、「ノーマライゼーションという言葉のいらないまちづくり」として、年齢や性別、障害の有無などの垣根を越えた住みよい社会の構築を進めており、多民族国家で共生社会の先進国とされるシンガポールから、多様性などについて学ぼうとさまざまな交流事業を展開。令和3、4年度は、高田高生と同国の自閉症の学生によるオンラインでのアート交流事業を実施した。
 市観光交流課の梅津径主査は「海外を訪れ、自分たちが外国人の側となることで、陸前高田に住む外国人への接し方なども変わると思う。そうした意識の変化が多文化共生にもつながりうる。伸び伸びと活動してもらい、国際的な視野を持つきっかけにしてもらいたい」と期待を込める。