人気集める「ありす蕎麦」 下有住地区で栽培 地域活性化へつなぐ取り組み

▲ ぽらんなどで販売されている「ありす蕎麦」

 住田町の地域協働組織・下有住いきいき活動協議会(吉田次男会長)が栽培したソバを使った乾麺やそば粉が、町内外から人気を集めている。種まきから栽培、収穫まで一連の作業に地域住民が参加しており、交流機会の創出にもつながっている。ソバの栽培を始めてから今年で6年目。同協議会では、ソバの収量増加に取り組みながら今後もソバ作りを通した地域活性化を進めていく。(清水辰彦)

 

 同協議会は、町が進める「小さな拠点づくり」に向けた地域協働組織で、平成29年6月に発足。遊休農地増加による悪影響が懸念される中、地域住民らが協働で農作物を栽培し、地区内の住民交流などにつなげようと30年からソバ栽培を始めた。
 東日本大震災後、旧下有住小学校校庭に仮設住宅が建設され、令和2年7月に全員が退去するまで、各地の被災者が生活。仮設入居者たちも、ソバの種まきや収獲、そば打ち体験に参加して地域住民と交流を深め、「ソバ」がコミュニティー形成の一助にもなった。
 新型コロナウイルスの感染拡大前には、多くの住民が参加し、そば打ち体験会なども開催してきたが、コロナ禍では体験会の規模縮小を余儀なくされた。
 こうした中、同協議会では「そば打ちを体験できていない人たちにも味わってほしい」との思いから、令和3年度に収穫したソバを製麺所、製粉所へと持ち込み、乾麺とそば粉を委託製造。「ありす蕎麦」と命名された商品は住田観光開発㈱(松田栄社長)が仕入れ、同社が運営する道の駅・種山ヶ原ぽらんのほか、世田米の町特産品販売センター「イーガストすみた」、県内の一部スーパーで4年度から販売している。商品のパッケージは、住田町とつながりのある東京都のデザイナーがデザインした。
 乾麺、そば粉とも風味豊かで、地場産品としてお中元やお歳暮、お土産などで人気を集めている。販売開始からこれまでに、合計で2000袋ほどが購入されたという。
 初年度の収穫量は、鳥獣被害もあって50㌔ほどにとどまったが、管理の工夫、栽培面積の拡大などに伴って、昨年度は500㌔ほどにまで増えた。
 本年度は、下有住地区内の計140㌃で栽培。地域の子どもたちや保護者らが今月9日と10日に種まきを行い、9月半ばごろの収穫を見込む。種まき、収穫だけでなく、乾燥後には付着した泥や石をきれいに取り除く作業にも住民が携わるなど、世代を超え、地域が一丸となってソバ作りに取り組んでいる。
 同協議会事務局の松田美代子さん(61)は「住民同士の交流を図りながら、地域づくりにつなげたい」と意欲をみせる。縮小されていたそば打ち体験会も、今年はコロナ禍前の規模での開催を見込んでおり、同協議会では交流機会の創出、拡大による地域活性化につなげたい考えだ。