連携の広がり少しずつ 大船渡・住田定住自立圏共生ビジョン懇談会 評価指標や変更点巡り議論
令和5年7月15日付 1面

大船渡市と住田町による大船渡・住田定住自立圏共生ビジョン懇談会は13日、盛町のシーパル大船渡で開かれた。持続可能な地域社会の形成に向け、令和2年3月に共生ビジョンを策定して以降、定住自立圏域として28の具体的な取り組みを掲げる中、出席委員は当局がまとめた各事業の業績評価指標などに多様な意見を寄せた。スポーツ振興や観光面など市町が連携しての取り組みも出始めてきた中、さらなる活性化や連動を見据えた活動の重要性が浮き彫りになった。(佐藤 壮)
定住自立圏は、一定の要件を満たした市(中心市)と近隣市町村が連携、協力し、必要な生活機能等を確保することで地域における定住の受け皿となるもの。大船渡市と住田町は、同市が生活機能の確保で中心的な役割を担う中心市となり、令和元年10月に定住自立圏形成協定を結んだ。
共生ビジョンは同協定に基づき、圏域全体の将来像や推進策をまとめたもので、期間は令和2~6年度の5年間。懇談会は、両市町の民間や地域関係者の意見を広く反映させるために設置され、16人で構成している。
この日は委員13人に加え、大船渡市の部長職員、住田町の課長職員らが並んだ。会長を務める山本健岩手県立大学総合政策学部教授は「それぞれの専門的な知見だけでなく、住民の視点からもきたんのない意見をお願いしたい」とあいさつした。
事務局は、共生ビジョン搭載事業の状況を説明。協定で規定した▽生活機能の強化▽結びつきやネットワークの強化▽圏域マネジメント能力の強化──の各視点から、医療、福祉、教育、産業振興、地域公共交通、地域内外の住民との交流・移住促進、圏域内市町の職員の交流などと各分野の事業を位置付け、計28の取り組みを盛り込んでいる。
協議では、共生ビジョンの一部変更を原案通り承認。
このうち、公共スポーツ施設相互利用促進事業では、新たに「圏域外の団体が大船渡市、住田町のスポーツ施設を利用して宿泊を伴うスポーツ合宿を実施した場合、宿泊地の市町は、スポーツ合宿を実施した団体に対して補助金を交付する」を追加した。
スポーツ合宿支援補助金は大船渡市が令和元年に創設。競技力向上や交流人口の拡大、東日本大震災後に整備された施設活用、地域活性化などを目的とし、市外の小中高校や、大学のスポーツ団体を対象としてきた。
市内のスポーツ施設などを利用する合宿で、さらに市内のホテルや旅館などに連続して2泊以上過ごし、宿泊者数は延べ20人以上が条件。宿泊者延べ人数1人当たり2000円を補助し、上限は20万円。本年度から住田町のスポーツ、宿泊施設を利用時も補助の対象となる。
委員からは、制度周知の現状を確認する発言も。さらなる情報発信や、施設利用のスムーズな紹介なども話題となった。
また、新型コロナウイルスの影響が落ち着きつつある中、外国人観光客の増加傾向に触れ、市国際交流員の活用やさらなる活性化に関する質問も。事務局側は、共生ビジョンに基づいて両市町が連携して12月に台湾で行われる「日本東北遊楽日2023」に出展し、岩手県における外国人観光客最重要市場である台湾からのインバウンド誘致、拡大を図る計画を示した。
ビジョンに盛り込んでいる広域観光の推進では、外国人観光客向けの観光ルート造成や受け入れ体制の整備を図るとともに、広域観光プロモーションを展開。両市町における外国人の観光客入込数は平成30年は761人だったが、令和6年には1485人まで伸ばす目標を掲げる。
このほか、委員からは職員合同研修の充実を求める声も。ビジョンでは圏域マネジメント能力強化の一つとして盛り込み、6年度目標として10回を掲げる一方、コロナ禍もあって4年度は2回にとどまった。事務局側は今後、働き方改革に加え、困難な状況に直面した時に立ち直る能力を高める「レジリエンス」をテーマとした研修の開催方針を示した。
昨年度までの実績をみると、遊休農地の新規作付面積や狩猟免許取得者数、移住者数などは6年度目標値並みか、上回る実績となった。両市町住民向けの男女共同参画に関する講座も目標を達成しているが、図書館の相互貸借サービス事業や、リアスホールや町農林会館の相互利用促進行事などは進まなかった。
本年度はスポーツ振興や観光面でさらなる連携を見据える中、他分野でも圏域としての特色を生かした取り組みに注目が集まる。