復旧の大きな節目祝う 旧吉田家住宅主屋 かやぶき作業完了で餅まき(別写真あり)

▲ 復旧が進む旧吉田家住宅主屋。かやぶきの完了を祝う餅まきが行われた

 東日本大震災の津波で全壊し、陸前高田市が復旧を進める気仙町今泉地区の県指定有形文化財・旧吉田家住宅主屋で26日、屋根のかやぶき作業完了を祝う餅まきが行われた。気仙大工・左官の技が息づく建物で、津波後に回収した部材を用いながら令和7年の完成を目指しており、関係者らは作業の大きな節目を喜び合った。
 吉田家は江戸時代に仙台藩の旧気仙郡を統治する「大肝入」を代々世襲し、郡政の中心的役割を果たしてきた。執務も行った住まいは享和2(1802)年に建築され、藩政期の歴史を知る数少ない遺構として、平成18年9月、主屋、土蔵、味噌蔵、納屋(長屋)が県指定有形文化財に指定された。
 この後、23年3月の震災で今泉地区は甚大な被害を受けて流失。県立博物館の協力のもとで残存部材の回収が進み、30年12月には、部材の6割以上が残った主屋1棟のみ県文化財として指定継続され、震災前とほぼ同じ場所となるかさ上げ地での復旧を決めた。市建設業協会(畠山正彦会長)が請け負い、一昨年8月に着工。伝統技術の継承も復旧方針に掲げ、令和7年3月の完成を目指して作業を進めている。
 屋根のかやぶきは1万6000束ものカヤを用いて行われた。完了を祝う同日の餅まきには、吉田家や建設業協会の関係者、今泉地区の住民ら約100人が集まった。
 青空のもと、職人たちが足場に上がって景気よく餅をまき、訪れた人たちとともに節目となる作業の完了を喜び合った。引き続き、同市学芸員の曳地隆元さんの案内で内部も見学し、気仙大工左官の技や復旧の進ちょくに触れた。
 工事現場棟りょうの藤原出穂さん(74)=小友町、出穂建築事務所=は「大きなところが一つ無事に終わり、きょうの天気のようにすかっとした気持ち。平常心で完成までしっかりとやっていきたい」と晴れやかな表情だった。
 震災前に主屋で暮らした経験がある吉田多嘉子さん(90)=高田町=も現場を訪れ、「嫁入りのころを思い出し、懐かしくて涙が出た。完成したら自分の足で玄関をくぐれるように、健康に気を配ってすごしたい」と話していた。(千葉雅弘)