46年ぶりの新機関車 岩手開発鉄道㈱ 石灰石運搬 次の50年見据え(別写真あり)
令和5年7月28日付 7面

大船渡市盛町の岩手開発鉄道㈱(岡田真一社長)は、石灰石運搬の貨車を運ぶ新たなディーゼル機関車を導入し、27日に社内で安全祈願を行った。同社では現在、4両体制で運行しているが、このうちの1両が〝引退〟し、新機関車の受け入れは46年ぶり。同日は岩手石橋駅(日頃市町)―赤崎駅(赤崎町)間で石灰石を積んだ状態での試験運行も行われ、地域の基幹産業を担う新たな勇姿が駆け抜けた。(佐藤 壮)
セメント原材料となる石灰石の輸送を担う同社の鉄道は、岩手石橋駅から日頃市駅、長安寺駅、盛駅を経由して赤崎駅を結ぶ約11・5㌔で運行。貨車は18両編成で一日13~18往復、1万㌧前後の石灰石を太平洋セメント㈱大船渡工場向けに運搬している。
更新に伴い、役目を終えたのは、昭和44年に製造・導入されたDD5652号。残りの3台も導入から50年前後が経過しているが、同号は3台に比べ古いエンジンを使用しており、老朽化が進み、部品調達が難しくなってきた中、検査期間のタイミングなども踏まえ廃車とする。
新車両のDD5602号は全長14㍍、幅2・84㍍で、エンジン機能も含めて既存車両と大きく変わらない。既存車両は前照灯と標識灯が上下に分かれていたが、新車両ではほぼ同じ位置にあり、正面から見た〝顔〟の印象は異なる。側面の手すりの位置にも違いがあるという。
同社での新型機関車導入は、昭和52年以来46年ぶり。6年ほど前から準備を進めてきた。新潟県内の工場で製造し、運転席やボディー、台車などに分け、計4台のトレーラーで同社に運び、今月21日に到着。組み立てを経て、24日から試運転が始まった。
27日は、実際に18両の貨車に石灰石を積んで運行。盛駅付近では、半世紀超にわたり運搬を担ってきたDD5652号からバトンを引き継ぐように、そばを駆け抜けていった。
試運転終了後には、車庫前で神事を執り行い、安全運行を誓い合った。岡田社長は「今年は近代化5カ年計画の最終年にあたる中、クライマックスを飾る車両であり、身が引き締まる思い。安全、安定、安心輸送への思いをより強くした。山と工場をしっかりとつなぎ、地域産業の一翼を担っていきたい」と話していた。
引き続き、運転士の訓練などを重ねた上で、本格的な運行に入る。鈴木貴之鉄道部長は「次の50年を見据えた時の輸送に向け、金属の疲労リスクがあり、1両でも新しい車両を入れたかった中、安堵している。引き続き、さまざまな設備の老朽化対策に当たりたい」と語る。