「好きだから続けたい」 人材不足に悩む「けんか七夕」 継続と運営のため仲間募る(動画、別写真あり)

▲ けんか七夕を愛し自発的に準備に携わるメンバーだが、個々の負担は深刻。新しい担い手が求められる

 約900年続くとされる陸前高田市気仙町今泉地区の伝統行事「けんか七夕」の準備作業が、8月7日(月)のまつり当日を前に本格化している。一方、年々深刻さを増す人材・資金不足に、同町けんか七夕祭り保存連合会(佐々木冨寿夫会長)の悩みは深い。山車の準備はおろか、これまで当日の昼夜1回ずつ行っていた山車のぶつかり合い(けんか)も、今年は人手が足りず夜の1回限りになる見通しという。同連合会は「自分たちだけでは続けられない。ボランティアに頼るばかりでもいけない。行政のバックアップと、地域の人たちのまつりを愛する気持ちが頼りだ」と、町内外から仲間を募っている。(鈴木英里)


 東日本大震災による地区への打撃、高齢化による後継者不足等の課題を抱えてきた同連合会は近年、20代の活躍がめざましい。山車制作のために毎夜集まるメンバー約20人の多くが、子どもの時から七夕を手伝ってきた若者だ。
 その半面、まつりの中心的な担い手となるべき30~40代や、技術を持ったベテランは減少。今泉地区コミュニティセンターでは昨年から、高台などの住民が「アザフ(山車飾り)」作りに参加しており、震災前のような地区をあげた準備風景が戻ったかのようにも見えるが、2基の山車制作に携わる人員は、引き続き少数で固定されてしまっているのが実情だ。
 そうした中、今年は同地区にゆかりのないメンバーが準備に飛び込んだ。広田町の西條翔汰さん(27)だ。
 震災の発生翌年に初めてけんか七夕を見て、その迫力に圧倒されたという西條さんは、大船渡東高校時代、太鼓部に所属し、けんか七夕のはやしを教わった。七夕太鼓保存会の誘いを受け、イベントなどで演奏する際は、今泉の人々と一緒にばちを握っている。
 一方、山車制作などの準備段階から加わるのは今回が初めて。「ずっと一緒にやりたいと思っていた。人と話したり、皆で協力して一から大きなものをつくりあげていくのが楽しい」という。
 「みんな優しいし、作業は和気あいあい」と西條さん。最初は顔見知りも少なかったが、「ここへ来て作業していれば、自然と受け入れてもらえる」と汗を流す。そんな西條さんについて、周囲も「地元のメンバーよりかせぐ(働く)ぐらいだ」と信頼を置く。
 佐々木会長(70)も「今泉の出身かどうかなんて関係ない。まつりが好きで、やってみたいという人は誰でも歓迎する」としたうえで、「しばらく七夕から離れていたせいで、『いまさら行きづらい』と感じている人もいると思うが、まずは飛び込んでみてほしい。〝けんか〟が好きという気持ちを、きっと思い出すはずだ」と間口を広げて待ち、持続可能な形でのまつりのあり方を模索する。
 また、連合会は現在、山車作りに欠かせない大量のフジのつる集めにも苦労しており、気仙3市町の山の持ち主でフジを提供できる人も探している。連絡は佐々木会長(℡090・3124・0098)まで。