郷土の軌跡 発信に評価 市立博物館 日本展示学会賞を受賞

▲ 日本展示学会賞の賞状とトロフィーを展示

 陸前高田市立博物館(松坂泰盛館長)が、全国の博物館や美術館の優れた展示に対して贈られる「日本展示学会賞」をこのほど受賞した。東日本大震災津波での全壊から再建した同館。被災後に全国の支援を受けて修復した資料も通じて震災の記憶や教訓を伝え、恐ろしさだけでなく豊かさをもたらしてきた海とともにある地域の歴史や文化を発信する展示内容が高く評価された。
 同賞は、社会的・文化的見地からきわめて高い水準が認められ、芸術や技術の総合的発展に寄与する優れた展示を顕彰するもの。3年に一度行っており、期間内に完成、リニューアルした展示施設、実施された展示企画などを対象としている。
 7回目となった今回は令和2年1月~令和4年12月が対象期間で、国立科学博物館の栗原祐司副館長ら6人の選考委員が、陸前高田市立博物館など10施設を選んだ。同館には今月に入って賞状と副賞のトロフィーが届き、館内で展示している。
 同館は、被災した「海と貝のミュージアム」との一体的な施設として高田町の中心市街地に再建し、昨年11月に開館した。全国の博物館関係者などの協力で修復された資料約7300点を展示している。
 選考では、「被災の履歴をあえて残した造形展示は、発見と被災前後で何があったのかを考えさせ、全国からの多種多様な協力でレスキューされたモノと人々の物語も含めて五感に訴える展示が出色である」「子どもが遊びながら学べる『発見の部屋』は、怖いだけでない奇跡の海の扱い方や故郷の歴史と文化をどう伝えるかを吟味した展示手法化がなされており、優しさにあふれている」などと、高く評価された。
 熊谷賢主任学芸員は「陸前高田の自然、歴史、文化とともに震災の記憶を伝え、海に畏敬の念を持ちつつ正しく恐れることを知ってもらいたい」と展示に込めた願いを語る。受賞については「評価していただき、たいへんうれしく思う」と喜び、資料修復など多方面からの協力に改めて謝意を示している。
 今回はこのほか、福島県浪江町の旧津島小による学習成果展「10年間ふるさとなみえ博物館」が奨励賞を受けた。
 気仙では同館のほか、令和2年に同市の東日本大震災津波伝承館が日本展示学会賞を受けている。(千葉雅弘)