12年越しの〝再会〟果たす 県警が震災遺体の身元特定 気仙町の山田さん 遺族のもとに遺骨引き渡し
令和5年8月4日付 7面

【一部既報】東日本大震災で被災し、その後発見された身元不明の遺体が、行方不明となっていた陸前高田市の女性であることが判明し、先月、遺族らに遺骨が引き渡された。迎え入れた遺族らは、発生から12年4カ月以上が経過した中での〝再会〟に驚きつつも、「おかえり」と家族の帰りを喜び、身元特定に心血を注ぐ警察官への感謝も伝えている。(菅野弘大)
県警察本部(高水紀美彦本部長)は2日、震災で被災し、身元不明となっている遺体のうち、3人の身元を特定したと発表。このうちの1人が、陸前高田市気仙町字町に住んでいた山田ヨシ子さん(当時83)だった。
震災当時、気仙川にほど近い自宅で1人暮らしをしていた山田さん。自宅かその近辺で津波にのまれたとみられ、発生から約5カ月後の平成23年8月31日、広田町の海中で遺体の一部が発見された。
県警では、親族とのミトコンドリアDNA鑑定結果などから山田さんを含む3人の身元を特定。山田さんの遺族らには、先月22日に遺骨が引き渡された。
今月2日、遺族らが取材に応じた。おいの山田誠さん(68)とめいの山田妙子さん(74)は、ヨシ子さんの遺影を手に「お帰り」「やっと帰ってこられたね」と声をかけ、優しくほほ笑んだ。
物静かな性格で、多彩な趣味を持っていたヨシ子さん。家族らは「逃げていてほしい」と願ったが、ついに対面はかなわなかった。「海に流されていれば、もう出てこないだろう」と半ば諦めの気持ちもあった。県警から身元判明の知らせを受けた妙子さんは「びっくりしたが、うれしかった。遺骨が帰ってきてほっとした。住んでいたまちに帰ってこられて、本人もほっとしているんじゃないかな」と思いをはせた。
先月30日に納骨した。これまで墓参りは欠かさなかったが、お墓に納めるヨシ子さんのものがなく、どこか寂しさを感じていた。誠さんは「今までは何もない墓参りだった。骨が戻ってきて、やっと供養ができる」と胸をなで下ろした。
県によると、震災の行方不明者数は6月30日現在で1110人。気仙両市は、大船渡市79人、陸前高田市202人となっており、発生から長い月日が流れた今も、大切な人の帰りを待つ人たちが多くいる。
誠さんは「警察の方が一生懸命捜してくださり、ありがたく思っている」と感謝し、妙子さんは「戻ってくるという希望を持って待っていて」と思いを語った。
県警捜査1課の昆幸喜次長は「長い月日が流れても身元が判明する可能性がある。身元不明者の特定には、遺族や地域の方の情報提供が必要。ささいなことでも諦めずに情報を寄せてほしい。われわれもご遺体を全てのご家族にお返しできるよう、活動を強力に推進していく」と話している。