芳名板掲示へ意向確認 みなと公園内整備の市震災追悼施設 来年3月完成目指し準備進む
令和5年8月9日付 1面

大船渡市は、来年3月の完成・除幕式を目指す東日本大震災追悼施設整備に向け、犠牲者の氏名を掲示する芳名板に関する意向確認を進めている。市内に在住していた犠牲者の遺族にはすでに、意向確認書を送付。市内で犠牲となった市外在住者も対象としており、掲示希望遺族らの問い合わせに応じている。施設の整備場所は大船渡町のみなと公園展望広場内。通常時はQRコードで読み取り、毎年3月11日に芳名板を設置する。(佐藤 壮)
施設には、モニュメントに加え、行方不明者や関連死を含む犠牲者の氏名を掲示する芳名板を設置する。氏名掲示に向け、市は意向確認を進めている。
県の発表によると、今年7月末現在、市内の震災死者は340人で、行方不明者は79人。芳名板設置に向け、行方不明者や関連死を含め犠牲になった人の住所が市内の場合は、対象となる遺族あてに意向確認書を送付した。必要事項を記入し、同封の返信用封筒での返送を求めている。
また、市内で犠牲になり、住所が市外の場合も対象とする。市によると、現段階で10人程度を把握しているという。
意向確認書が届いていなかったり、対象者の氏名掲示を希望する場合は市防災管理室(℡27・3111内線239)に問い合わせを。
市は今年4月、追悼施設整備方針を策定。市議会全員協議会や住民意見募集で示した案を、ほぼそのまま生かした。
方針では、目的に▽震災で亡くなった市民に対する深い追悼▽震災の記憶を決して風化させることなく未来への教訓とし、今後の災害に備える意識啓発を図る▽震災を乗り越え復興した思いを伝える——を掲げる。
県が整備したみなと公園の整備コンセプトには「直立堤の存在感を和らげ、人々が集える居場所づくり」があり、その妨げとなる影響も考慮。平常時はQRコードをスマートフォンで読み取ると、画面上に犠牲者の氏名が表示される。芳名板は、発災日の3月11日に毎年掲示し、犠牲者に思いを寄せる。
犠牲者の氏名は遺族から意向が確認できた場合のみ掲示し、地区・世帯ごとの50音順が基本。設置後に修正する可能性も考慮し、入れ替え可能なものとする。死亡時の満年齢も添える。
施設の基本構成は、碑かモニュメント、取り外し式の芳名板、過去の津波高表示、施設案内、避難誘導標識とする。被害状況や追悼、後世へのメッセージ、復興の歩みなども記すことにしている。
市は整備業務の優先交渉権者を、公募型プロポーザル方式による審査の結果、匠建設・五葉建築設計事務所・サイト共同提案体に決めた。業務委託期間は来年2月26日(月)までで、審査での提案限度額は税込み2500万円を示していた。
審査前に市がまとめた企画提案仕様書によると、基本構想には「多くの来訪を見据え、宗教色がなく、広く人々に受け入れられるもの」を盛り込んだ。また、強風に見舞われる場所でもあることから、安全性への配慮や容易に倒壊・損傷しない構造も求めている。
モニュメント等の大きさは、高さ2㍍、幅1・7㍍、奥行き0・5㍍以内。来訪者が海に向かって祈ることができる場所とする。今後、実物大の模型などを用いて、視界のさえぎりなどの有無を現地確認することにしている。
遺族等が献花できる機能を備えることとし、強風等により容易に花が散乱しないような構造にも配慮する。追悼式典などによる大規模な献花については想定していないという。
また、過去の津波の高さの表示板を設置する場所はスロープ路とし、明治三陸地震津波や昭和三陸地震津波、チリ地震津波の高さについて、それぞれおおむねの海面からの高さの位置とする。防潮堤の高さは海面高7・5㍍であることから、比較しやすい形状を目指す。
施設名称は庁内検討委で案を固め、市長が決める。今後は、優先交渉事業体との調整、県などとの協議・申請のほか、氏名掲示への意向確認などを進める。製作、施工は11月以降本格化し、来年3月11日(月)までの除幕式を目指す。