過ぎゆく夏に思い寄せ 盛川で「灯ろう流し」 大輪の花が夜空彩る(別写真あり)

▲ おたき上げの炎が立つ中、川岸に並べられた灯ろう

 大船渡市盛町の伝統行事「盛川灯ろう流し」は20日夜、同町の権現堂橋たもとで行われた。コロナ禍前と同様の通常開催となり、川岸には約500個の灯ろうが並び、盆飾りなどを燃やすおたき上げの炎が立つ中、長安寺太鼓の演奏が響き渡った。フィナーレを飾る形で花火が打ち上げられ、大輪が夜空を彩る中、住民らはさまざまな思いを寄せた。(佐藤 壮)

 

 灯ろう流しは吉野町公民館(鈴木仙三館長)が中心となって実施。100年以上続くとされ、気仙の夏を締めくくる風物詩となっている。新型コロナウイルスの影響で令和2、3年は見合わせ、昨年復活した。
 今年も増水の影響で、灯ろうを川に流さず、川岸に1個ずつ並べた。地域住民らは読経が響く中、やわらかな灯ろうの明かりが面となった幻想的な光景や、おたき上げの炎を見つめるとともに、故人や先祖をしのんだ。

フィナーレを飾った花火の打ち上げ

 会場には、震災物故者の冥福を祈る木製の仏塔「三重の塔」も設置。静かに手を合わせ、鎮魂の祈りをささげる人々の姿が見られた。
 河川敷ではコロナ禍後初めて、長安寺太鼓の演奏が披露された。幅広い世代のメンバーが太鼓を打ち鳴らし、訪れた市民らを魅了した。
 この日は夜も蒸し暑さが広がった一方、30度を超えた日中よりはいくぶん過ごしやすく、幅広い世代の住民が来場。露店も並び、にぎわいが生まれた中、知り合いを見つけては談笑する光景も多く見られた。

 昨年に続き、灯ろう流し行事のフィナーレを飾る形で盛町夏まつり実行委員会が午後8時から花火の打ち上げを行い、30分超にわたり夜空に大輪が描かれた。権現堂橋周辺だけでなく、「さかりグルメまつり」が開かれたサン・リア屋上でも多くの住民らが堪能した。
 鈴木館長(70)は「ようやく日常的な催事に戻ったという感じがする。地域の行事として定着しており、今年も多くの住民の方に手伝っていただいた。盛町内だけでなく、大船渡町や猪川町などからも来ていただいているのは、私たちにとってはありがたい」と話していた。