陸前高田でサーモン試験養殖へ 水産大手のニッスイ 広田湾漁協と共同で計画 11月の着手目指す
令和5年9月1日付 1面
水産大手の㈱ニッスイ(東京都、浜田晋吾代表取締役社長執行役員)は8月31日、陸前高田市の広田湾漁協(砂田光保代表理事組合長)と共同で同湾でのサーモン養殖試験に着手する計画について発表した。県との協議などを経て、11月にもスタートさせたいとしている。発表を受け、同日は市も会見を開き、佐々木拓市長は地域経済への波及効果などへの期待を語った。
ニッスイは、国内ではブリやマグロ、ギンザケ、サバなど、養殖事業も展開。県内では大槌町に拠点を置いている。
同社や市によると、養殖試験の魚種はギンザケ。直径25㍍の円形海面いけす2基を用いる。候補地は広田漁港沖などの旧定置網漁場で、静穏な場所と潮通しのよい場所での成育を比較する考え。11月の着手を見込み、来年6~7月ごろの水揚げを目指す。計画生産量は200㌧。
現地で立ち上げた事業所が組合員となり漁業権を行使するという、試験養殖を経て昨年事業化した大槌での取り組みに準じた内容で、打診を受けた広田湾漁協では8月29日に理事会を開いて承認した。各種手続きなどについて県との調整を進めていく。村上修参事は「漁業生産力の向上や漁場の有効活用につながれば」としている。
ニッスイは、「陸前高田市でも養殖事業を実施することにより、さらなる生産規模の拡大と効率的かつ安定的な事業の展開を図ると同時に、同市の産業振興と新たな雇用の創出を通じ地域社会に貢献していく」とする。
市役所での会見で、佐々木市長は誘致活動の一環で同社と意見交換したうえで、今年5月ごろから計画の検討が始まったと明かした。「三陸沿岸道路での仙台へのアクセス利便を含めた立地条件も決め手になったととらえている。本格化すれば、最終的に数千㌧、数十億円規模の事業になると聞いており、直接雇用は20人程度だというが、漁協経営や関連産業への貢献も含めて効果は大きい。新たな地域ブランドとしての全国発信へ期待が高まる」と大いに歓迎した。
市としては県への各種申請のバックアップや水質調査、生産品のPRに向けた地元企業との意見交換などに関わる考えを示し、「地元の漁業者の皆さんに安心してもらいながら事業が進められるよう、サポートする」と力を込めた。