景観・環境を最終確認 復旧後の防潮堤や水門 県の有識者検討委 大船渡で会議 震災後12年の活動に幕
令和5年9月6日付 7面

県の河川・海岸構造物の復旧等における環境・景観検討委員会(委員長・南正昭岩手大学理工学部教授、委員7人)は4日、大船渡市などで最終の現地調査と会議を行った。会議では、県側が東日本大震災津波後に整備した沿岸部の防潮堤や水門などで取り組んだ景観形成、環境モニタリング調査の結果などを示し、委員らが確認。景観への配慮がなされ、自然環境の回復や維持がみられていることから、平成23年11月から約12年展開してきた委員会の活動を終えた。(三浦佳恵)
同検討委は、震災にかかる防潮堤等の大規模な河川・海岸構造物の復旧などにおける環境・景観の検討を一体的に行い、計画から施工まで一貫した自然環境との共生、地域の特性を生かした良好な景観形成の保全・創出を図ろうと設置。景観や環境を専門とする有識者らで構成し、国の関係省庁がオブザーバーとして参画している。
震災から約8カ月後に初回会議を開き、海岸の地形、河口部の有無、構造物の種別などの観点から▽砂浜海岸(陸前高田市)▽港湾海岸(大船渡市)▽複数河川河口部(大槌町)▽観光地周辺(宮古市)──のモデル地区4カ所を設定。現地調査も交えながら、防潮堤や水門などの復旧に必要な環境・景観への配慮事項などを検討してきた。
最終回となったこの日は、午前中に陸前高田市の高田海岸と大船渡市の大船渡港海岸で非公開の現地調査を実施。午後は、同市大船渡町の大船渡プラザホテルで会議を開いた。
会議にはオンラインを含む委員5人が出席し、南委員長は「委員会は一定の役割を果たし、本日が最後。専門的な意見をいただき、課題を明確化して今後に生かしていきたい」とあいさつ。議事は非公開で行われ、県によると景観、環境それぞれの配慮に対する県の取り組み状況をもとに、委員らが意見交換したという。
景観配慮では、大船渡港海岸や高田海岸などの事例を報告。このうち、大船渡港海岸は市街地近くに位置する防潮堤に築山を設けて公園として利用。地域コミュニティーの拠点を確保し、長い堤防への印象を和らげた。
高田松原津波復興祈念公園内の高田海岸では、機能美を備えたシンプルなデザインになるよう配慮。気仙川水門は、色彩を統一するなどの工夫を図った。
環境に関しては、県が沿岸32地区に加え、大船渡市の盛川と須崎川、陸前高田市の高田地区を含むモデル地区で行った環境モニタリング調査の結果を提示。陸生生物(植物、動物)や水生生物(内水面、海面)を調べ、被災からの回復状況、今後の見通しなどをまとめた。
気仙のモデル地区では、津波によって動植物の生息・生育環境がかく乱された。調査結果のうち、盛川と須崎川は「河川域内の湿性植物の生育は維持されており、その環境を利用する動物(特に鳥類)も確認されていることから、河川域内の動植物の生息・生育環境は今後も維持されると推察する」と評価。
高田海岸は「養浜や捨石工などのさまざまな取り組み、植生遷移の進行によって被災で失われた自然環境の回復が進み、今後も動植物の生息・生育環境の再生が進行していくと推察される」との見解を示した。
議事を終えた委員らは、データの共有や可能な範囲での調査継続などを提言。県はこれまでのデータをとりまとめ、今後に生かしていくとしている。