検証/県議選大船渡・陸前高田選挙区(定数2) 圧勝と激戦の二極化に 新区割りで議員活動変わるか

 現新計3人が立候補した県議選大船渡・陸前高田選挙区(定数2)は、無所属の現職・千葉盛氏(40)=大船渡市猪川町=が再選を、自民党の現職・佐々木茂光氏(65)=陸前高田市気仙町=が4選を飾り、初当選を狙った無所属の新人・畠山恵美子氏(53)=同市横田町、自民党県連推薦=は、惜しくも当選に届かなかった。新たな区割り下で2議席をかけて争った三つどもえは、圧勝と激戦の二極化が際立った。(佐藤 壮)

 

 県議選(定数48)は今回、県内14選挙区で行われ、計65人が立候補。競争選になったのは宮古(定数3)と遠野(同1)を除く12選挙区で、44議席の顔ぶれは、開票が行われた3日深夜に決まった。
 大船渡・陸前高田選挙区は、千葉氏の圧勝ぶりが目立った。獲得した1万6383票は、県内全選挙区で2番目に多い得票数だった。
 定数2で行われたのは大船渡・陸前高田のほか、久慈、二戸、八幡平、釜石、紫波の計6選挙区。千葉氏は全候補者の中で唯一、選挙区内の有効投票総数(3万2573票)に占める得票数の割合が50%を超えた。
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 前哨戦の後援会活動では、千葉氏本人と関係者数人が地域を回り、県議会活動をまとめた会報を配りながら実績を伝えた。大きな公共施設での集会はなく、目に見える形で、圧倒的な強さを示す場面は少なかった。
 4年前、大船渡選挙区で新人同士の一騎打ちを戦い、1万1383票を獲得して初当選。今回も同日投開票の知事選では、5選を果たした現職・達増拓也氏(59)を支持した。
 各地に2連ポスターを掲げる時期もあったが、達増氏が国会議員と並ぶなど、千葉氏と一緒ではないポスターも散見された。自民以外の政党・団体の支持動向も、表向きには軒並み「自主」のままだった。
 それでも、圧勝の雰囲気は、早い段階から広がっていた。市内では、現職両氏や新人・畠山氏の出馬表明以降も〝4人目〟に関心が広がり、水面下で擁立に向けた動きもあったが、実現しなかった。
 市内から唯一の地元候補で、選挙区全体で達増氏支持は1人だけ。独走の構図となった中、緩やかに支持を固めた。陸前高田市と住田町の得票数はいずれも3位だったが、大船渡市では余りある強さが光った。
 東海新報社が先月28~30日に気仙3市町の期日前投票会場で実施した出口調査では、達増氏に加え、佐々木氏と畠山氏が支持した新人・千葉絢子氏(45)に期日前投票した中でも、県議選で千葉盛氏を選んだ割合が最も高かった。知事選との連動や、政党支持を超えた広がりも生まれた。
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 一方、2議席目をかけた争いは、最後まで見極めが難しかった。佐々木氏は、自身が代表を務める自民党陸前高田市支部の上申で県連公認を得て、畠山氏は大船渡支部の支援を受け、県連推薦となった。どちらも自民党系だが、2議席を独占しようという雰囲気は感じられず、終始、佐々木氏と畠山氏が激しく争う構図で展開された。
 陸前高田選挙区で連続3選した佐々木氏だが、競争選は陸前高田市と住田町で計1万142票を得た平成23年以来12年ぶり。後援会組織が選挙戦を支える一方、支持者の高齢化もあり、思うように動けないもどかしさもあった。
 さらに、有権者の6割弱を占める大船渡市内にも入らなければならない。組織的な支えがない中、手探りが続いた。8月5日に「励ます会」を市魚市場で開いたが、空席が目立ち、苦戦ぶりを露呈した。
 一方、陸前高田市内では底堅さを見せつけた。市内での励ます会や告示後の第一声、最終日の演説はいずれも100人以上が詰めかけ、動員力は他の2陣営よりも抜けていた。終盤は「厳しい」を連呼し、懸命に支持を訴えた。
 陸前高田市議を辞し、気仙から初の女性県議を狙った畠山氏。すでに現職が出馬に手を挙げていた中、住田町と陸前高田市では後援会が中心となって知名度向上を図り、大船渡市内は自民党支部の支援を受けた。つじ立ちやインターネットでの発信にも力を入れ、女性への浸透も重視するなど、出遅れ感は感じさせなかった。
 活発な地域回りが光った住田町では現職両氏を抑えた一方、大船渡市で思うように票が伸びず、陸前高田市で佐々木氏に離された。開票日の3日、畠山陣営の一人は「選挙区が広い分、こちらに力を入れれば、別が手薄になる状態。難しかった」とこぼした。
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 気仙で見れば、定数が「1と1」から「2」になったが、当選者の顔ぶれは、前回と変わらない。得票では、千葉氏は今回も大船渡市で、佐々木氏は12年前と同様に、陸前高田市で強さを発揮した。
 では、活動はどうか。ある程度すみ分けをしながら、今後も地盤を生かした動きを続けるべきなのか。
 両氏とも4年前と異なり、千葉氏は陸前高田市と住田町、佐々木氏は大船渡市でも訴えを響かせた。勝利は収めたが、集票を伸ばせなかった市町の実情にもっと目を向け、丁寧に課題を拾い、県政につなげる意識を大切にしてほしい。
 3市町の連携を充実させ、気仙として存在感を高めるけん引役も求められる。気仙全域の住民が、両氏の行動力や発進力に目を向ける。多数のまとまりだけでなく、声を出せずに我慢を強いられている住民や、小さな地域の困りごとにも向き合う姿勢も、忘れてはならない。