〝引っ越し〟へ初の入札 旧大船渡消防署跡地のアカマツ 市内移植や継続管理条件に
令和5年9月8日付 7面

大船渡市は、盛町の旧大船渡消防署跡地にあるアカマツを、一般競争入札で売却する。現状のまま引き渡し、伐採せず、落札者の費用負担で市内に移植し、管理することが条件。長年、見事な枝ぶりを誇り、地域住民にも愛されてきたことから、市などでは〝引っ越し〟を終えたあとも、地域のシンボルとしての役割に期待を込める。11日(月)午前10時から、現地説明会を計画している。(佐藤 壮)
このアカマツは気仙、東北屈指の大長者だった猪川村・稲子沢家から約80年前、当時の郡役所に移植されたという名木。気仙の風景やさまざまな文化や行事などを取り上げる、さいとう製菓㈱発行の書籍『気仙 辺辺(あだりほどり)の四季』には、このアカマツが〝長寿の松〟として紹介されている。盆栽のような優美さと、見事な枝ぶりは消防の「義勇愛郷」の精神を表していた。
書籍では、消防署が入る前の気仙地方事務所(合同庁舎)は、マツを引き立たせるように、庁舎が設計されたとのエピソードも紹介。消防署時代は、署員や団員たちがこのマツを背景に記念写真に収まった。
消防署施設はリアスホール西側の高台に新築整備され、旧施設は令和2年度に解体。以降、ぽつんとした状態で残り続ける。地元の公民館関係者が、下草刈りを行うこともあった。
もともと、消防署移転時から、住民から「残してほしい」との声を受けていた。しかし、住民たちが根元の下草刈りといった作業はできても、マツ全体までは難しく、管理が課題となっていた。
市では、跡地全体の有効活用や財政確保、マツの利活用を見据え、立木だけでは初となる一般入札の実施を決めた。この間、地区公民館などに状況を説明し、理解を得たという。
アカマツの高さは約3・2㍍で、幹周りは約1・7㍍、葉が張り出す幅は約6㍍。市によると、長期間手入れされていないため枯れ枝が目立つ一方、新芽の状況から樹勢はあるとみられる。過去にこぶ病が発生し、樹木医の治療を受けている。
最低売却価格は28万5000円(税抜き)。条件は▽入札物件と付属物品は現状有姿(現在の状況のまま)の引き渡し▽入札物件は伐採せず、落札者の費用負担で大船渡市内に移植し、管理する──などを掲げる。
入札参加の申込書や入札案内書は、市ホームページからダウンロードできる。申込書に必要書類を添え、総務部財政課管財係に申し込む。期限は20日(水)午後5時15分。入札は26日(火)午前10時から、市役所第1会議室で予定している。最低売却価格以上で、最も高い入札者を落札者とする方法で行う。
現地説明会は、11日午前10時から現地で。希望者は8日までに同係に申し込む。問い合わせも同係(℡27・3111内線219)へ。