「農福連携」に新たな動き タカタアグリコンソーシアム 農家と働き手のマッチング図る
令和5年9月13日付 2面
陸前高田市の農家と一般財団法人みらい創造財団朝日のあたる家(新田國夫代表理事)でつくる団体「タカタアグリコンソーシアム」(吉田司代表、TAC)は、労働力を確保したい農家と、就労機会を求める福祉関係事業所とのマッチングを図る「農福連携」の新たな取り組みを進めている。コーディネーターが農家と気仙の事業所の仲介や個別支援を行い、各ほ場や働き手の受け入れ体制などの課題解決も目指しながら、持続可能な地場産業や福祉社会につなげる。(阿部仁志)
TACは、「生産量を上げたいが労働力が足りない」という小規模農家と、「農業における就労体験や機会などの需要はあるが十分に提供できていない」という就労支援事業所のマッチングを推進しようと、今年4月に本格始動。朝日のあたる家が幹事団体となり、国の休眠預金活用事業の採択を受けている。
12日現在、TACには吉田代表が営むリンゴ農園「イドバダアップル」をはじめ、ブドウ、オクラ、ピーマンなどの市内農家7軒が登録。朝日のあたる家スタッフの鈴木拓さん(40)がコーディネーターとなり、農家らと運営協議を行って人手が必要とされる業務を把握。そこから就労支援事業所と仕事のマッチングを図り、利用者に対する個別支援も行う。
本年度は、気仙地域の就労継続支援B型事業所を対象に声がけし、10余りの事業所がTACの各農家と連携。事業所の利用者と職員がチームを組み、施設外就労で野菜の収穫や選別、果物の摘果、枝切り、ほ場の草刈り、加工品の製造補助などの仕事に臨んでいる。
このうち、横田町でピーマンやショウガなどを栽培する農場「FarmKoganeyama」(ファーム小金山)を営む小金山忍さん(40)は、高田町の就労継続支援B型事業所「作業所きらり」(細谷英樹所長)と連携。ピーマンの収穫が本格化した7月から、主に選別作業を利用者に任せている。
今月5日の午前中は、きらりの利用者2人と職員1人が小金山さんの自宅裏の作業場で作業。ピーマンのへたから伸びる余分な枝を切り落としたあと、色、形の悪いものがないかを一つ一つ確認し、各カゴに分別して入れていった。
就農2年目の小金山さんは、10㌃あるピーマンほ場をほぼ一人で管理していたが、農福連携により負担が軽減。「自分は収穫をメインでやって、きらりの皆さんに選別に入ってもらうと、ちょうどいい流れができるのでありがたい。来年も人手を見込めそうなので、ほ場を徐々に広げていくことも視野に入れる」と意欲を語る。
障害がある利用者らが無理なく作業を行えるよう、TACや施設を通じて得た情報をもとに、作業場の配置を変えるなど工夫もしている。
きらり職員の佐々木尚子さん(45)は「きらりの利用者は年齢層が高く、『特定の作業しかできない』という人も出てくる。そうした中、小金山さんには細やかな配慮をいただき、利用者は生き生きと仕事に臨めている」と良い連携ができていることに感謝した。
現場を回る鈴木さんは、各農家での作業の様子を写真や動画に収め、農福連携の「ストーリー」としてSNS等で広報する役割も担う。「仕事だけを預けて『あとはよろしく』という連携ではうまくいかない。しっかり情報発信し、課題があれば改善していく。働き手と農家の双方がウィンウィンな関係になるためには、さまざまなサポートをすることが必要」と語る。
朝日のあたる家によると、本年度内における農福連携のマッチング件数は13件となる見込みで、県内でもトップレベルの実績になるという。
将来的には鈴木さん以外の現場支援員を増やし、引きこもりの人の就労支援や生活困窮者の支援などにもつなげたい考え。
鈴木さんは「今後は秋野菜や果物の収穫が始まる。自分も各現場に足を運び、一緒に汗を流してさまざまな課題を共有しながら、来年度以降の事業へと生かしていきたい」と先を見据える。