外国人 コロナ禍以降最多に 8月末現在366人で全人口の1%超 交流・相談や実習生確保の課題も

▲ 在住外国人を主な対象とした浴衣着付け体験。一般住民らとのさらなる交流機会創出が求められている(10日、大船渡町)

 大船渡市の8月31日時点における外国人登録者数が366人と、新型コロナウイルスの影響が広がった令和2年4月以降では最多となった。全人口に占める割合も1%超に。少子高齢化や労働力不足が進み、今後も技能実習生を中心に増加が予想される一方、市内事業者などの間では制度改正による都市部や大企業への人材流出の危機感が広がる。また、多文化共生社会の観点で、在住外国人とのコミュニケーションや相談窓口の充実を求める声も出ている。(佐藤 壮、2面に一般質問の主なやり取り)

 外国人登録者数の現状については、14日に行われた市議会一般質問で今野善信議員(新政同友会)が取り上げた。今野勝則商工港湾部長は8月末現在、ベトナムからの136人を筆頭に、中国やミャンマーなど計366人が登録されている現状を説明。「人数は令和2年4月以降で最多。技能実習生が207人、特定技能制度の在留外国人が51人で計258人と、登録の7割を占める」と語った。
 8月末の市内総人口は3万3053人で、前月比で21人増加。日本人の人口は41人減少したが、外国人の人口は304人から366人と62人増え、全人口に占める割合も0・9%から1・1%となった。外国人のうち、男性は76人で、女性は290人となっている。
 市統計書によると、外国人登録者数は平成30年度(10月末時点)が410人で、令和元年度が396人。新型ウイルスの影響が広がった2年度は335人、3年度は276人、4年度は307人で推移してきた。
 現状について今野部長は「滞在期間が数カ月から数年と短く、職場と住む場所の往復が中心で、現状では地域や市民と交流する機会が少ない。一方で、地域活動やまつりに積極的に参加させている企業もあり、相互理解につながっている」との認識を示した。
 また、政府の技能実習制度や特定技能制度のあり方に関する有識者会議が5月に取りまとめた中間報告書にも言及。報告書では、現行制度を廃止した上での人材確保や人材育成を目的とする新たな制度創設や、転籍制限の緩和、監理・支援能力の向上などの方向性を示している。
 今野部長は「人材が条件の良い都市部に流れるなど、新制度の内容によっては、地方ではこれまでのように受け入れができなくなる可能性もある」と指摘。外国人が住みやすく、働きやすい環境づくりが求められる流れにも触れ、「今秋をめどに取りまとめが予想される最終報告書と、それに対する国の動向を注視しながら、受け入れ企業や管理団体と連携し、人材確保に向けた取り組みを検討する」と語った。
 技能実習制度に関しては、大船渡市をはじめ岩手、宮城両県の沿岸を中心とした外国人技能実習生監理団体で構成する東北外国人材団体協議会が、5月に要望活動を展開。有識者会議案に対し▽特定技能制度へのキャリアアップにおける新制度の人材育成期間を短縮せず、3年間は維持を▽やむを得ない事情を除き、3年間の転籍制限を▽地方公共団体の支援も強化し、日本語習得環境や地域を巻き込んだコミュニティーづくりを──の3点を求めた。
 また、市は令和3年3月に策定した市総合計画で、異文化に対する理解を深め、人権を尊重し合う多文化共生社会を掲げる。現在、外国人に関する事業は国際交流を担当する観光交流推進室が主に対応している中、今野部長は「多文化共生社会の実現には、国際交流という視点だけでなく、雇用、教育、福祉などさまざまな視点での対応が必要」とも答弁。市の部局内のみならず、関係機関と連携強化にも意欲を示した。
 これに対し、今野議員は再質問で「外国人実習生は、日本人とのコミュニケーションや災害、緊急時対応の不安を抱える。窓口を設置するといった対応が足りないのではないか」「相談体制の充実は、今からやるべき」と追及。今野部長は「生活者対応の部分が不足しているのは否めない。どういう関わりが必要かの検討を重ねていきたい」とし、理解を求めた。