国内外に活躍の場広げる 現代美術家・松田ハルさん 気仙町出身 東京・六本木に展示中の作品も

▲ 六本木に展示されている『A Whole NewWorld』(松田さん提供)

 東京都港区六本木の街中に、陸前高田市気仙町出身の現代美術家・松田ハルさん(24)=東京都在住=が手掛けたパブリックアート「A Whole New World」が展示され、印象的な青色が都会の風景に鮮烈な彩りを添えている。このほど開かれた若手アーティストの現代美術展覧会で上位入賞を果たし、今後も国内外の作品展への出展を予定しているなど、東京を拠点に活躍の場を広げる松田さん。「あくまでも挑戦的な姿勢を崩さず、自分にとっての正しさを追い続けたい」と前を見据える。(新沼麻波)

 

松田ハルさん(本人提供)

 このパブリックアートは、今年5月に開かれた東京を代表するアートの祭典「六本木アートナイト2023」(東京都など主催)の先行展示プログラムとして披露された。麻布消防署仮庁舎予定地の工事現場を囲むシートに印刷されており、縦3㍍、横23㍍の大作。同イベント終了後も展示は継続中で、松田さんによると本年度いっぱいは見られるという。
 松田さんの作品は、最新技術のVR(仮想現実)と、古い歴史を持つ版画の技法を組み合わせている点が特徴。人間の体やフェイクグリーン(人工的な観葉植物)などをVR空間で加工し、版画の技法の一種であるシルクスクリーンで対象物に印刷する手法を確立させ、作品を作り上げている。
 筑波大芸術専門学群美術専攻版画領域で学んだ松田さんは、現代にはきれいに印刷できる技術があるにもかかわらず、過去の複製技術である版画を美術として教えていることを不思議に思った。その疑問をきっかけに生まれた技法が、VRなどの最新技術を活用した現代的な複製技術だった。
 京都芸術大大学院グローバル・ゼミ修了後、松田さんは東京を拠点に活動。このほど開かれた若手アーティストの現代美術展覧会「アートアワードトーキョー 丸の内」にも3作品を出展し、グランプリに次ぐ上位5賞の一つ「フランス大使館賞」に輝いた。今後も国内外の作品展への出展を予定しており、今も新しい作品を手掛けている最中だ。
 松田さんが大切にしているのは、「『自分は何をしたいのか』という意志を持ち続け、そこからぶれないような作品にすること」。「ある程度成功したとしても落ち着いたりせず、気持ちにうそをつかずにやっていきたい」と一本芯の通った志を掲げる。
 松田さんに関する最新情報は、本人のInstagram(hal_matsuda)で確認を。