育苗通じて人材交流を 住田町、邑サポート、モア・トゥリーズ 協定結びプロジェクト展開へ(別写真あり)

▲ (左から)奈良代表理事、神田町長、水谷事務局長が協定書に署名

 住田町と同町の一般社団法人・邑サポート(奈良朋彦代表理事)、同・モアトゥリーズ(東京都、隈研吾代表理事)の3者は27日、「育苗プロジェクトに関する連携協定」を締結した。同プロジェクトは、町内で採取した木の種を苗木まで育てて植樹用に販売するもの。同日は世田米の仕事と学び複合施設(愛称・イコウェルすみた)で締結式が開かれ、関係者が森林づくりやそれを通じた人材交流の活性化に期待を込めた。(清水辰彦)

 

 同プロジェクトは、森づくりを通じた町内外の住民交流による移住者・関係人口の拡大、森林林業に携わる人材増加に加えて、住田町の植物の遺伝子を後世に残すことや、苗の地産地消による町内での経済循環を目的として行う。
 町民や森づくりに関心のある企業とともに、町内の森林で広葉樹を中心とした種を採取し、イコウェルすみたの敷地内に整備する育苗施設で管理する。種の採取者も〝里親〟として水やりなどの管理を担うことで、育苗を通じた人材交流の機会も創出していく。
 育てた苗は企業や森林組合などに植樹用として販売し、町内で植えてもらう。さらに、販売による収益をプロジェクト運営費等に充てることで、地域内での経済循環を図る。
 締結式には関係者ら約10人が出席。神田謙一町長と奈良代表理事、モア・トゥリーズの水谷伸吉事務局長が、それぞれ協定書に署名した。
 町は育苗場所としてイコウェルすみたを提供。森林保全団体として活動し、震災を受けて町が建設した木造応急仮設住宅への支援も行ってきたモア・トゥリーズが、育苗施設の提供や森づくりに関わる企業参加の調整を担う。
 邑サポートは震災後、町内の仮設住宅で暮らす被災者や地域住民、支援団体をつなぐ活動を展開し、現在も住民活動支援や地元イベントの企画・運営支援などに尽力。プロジェクト中では育苗管理や販売、イベント開催などに取り組む。
 神田町長は、同町では保育園児から一般まで、年代に応じた森林環境学習を展開していることを紹介したうえで「地域住民らが種の採取から育苗などに関わることは、森の多様性を認識して豊かな森づくりの一部を体現できるものと感じている」と述べた。
 「地域内外の人材交流の促進が期待され、施設利用者の増加と関係人口の創出につながり、その先の若者の定住率向上まで飛躍させることが重要」と、人材交流拠点と位置付けるイコウェルの活用と機能発揮にも期待を寄せた。
 水谷事務局長、奈良代表理事もそれぞれ、プロジェクトを通じた森林づくりや交流・関係人口創出などへの意気込みを語った。
 10月6日(金)には地元保育園児とともに種山ヶ原森林公園内で種を採取する予定。令和6年秋から7年春にかけての苗木の販売開始を目指す。