気仙初の「候補DMO」に (一社)大船渡地域戦略を観光庁が認定 観光地域づくりの〝司令塔〟見据え
令和5年9月29日付 1面

大船渡市の一般社団法人大船渡地域戦略(志田繕隆理事長)が、観光庁から観光地域づくり候補法人(候補DMO)に認定された。気仙の団体が地域DMOに候補登録されるのは初。地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに、地域経営の視点に立った観光地域づくりの司令塔として、戦略策定や観光振興策の取り組み強化が期待される。今後は地元事業所と連携を強化するとともに、活動の住民周知にも力を入れながら国内外の旅行客を取り込み、登録DMOへの〝昇格〟を目指す。(佐藤 壮)
大船渡地域戦略は、令和3年9月に設立。市内を中心とした「恋する旅行。大船渡」と題したモニターツアーや、地域経済循環に向けたポイントサービス事業「大船渡さんぽ」などを展開し、市内事業所を中心とした正会員14社、賛助会員20社で組織している。
これまで、観光資源の磨き上げとして、体験や食事、宿泊など大船渡の魅力を感じられるコンテンツを組み合わせたツアー「恋する旅行。大船渡」を実施。情報発信では、テレビやSNSを活用した「恋する旅行」ブランドのプロモーション活動を展開し、海外向けの観光情報発信も市内関係者と連携をとりながら進めた。
また、地域循環型ポイントアプリ「大船渡さんぽ」を生かし、消費動向データを活用した販促イベントやキャンペーンを実施。観光に携わる地域人材養成に向けたインバウンド対応強化研修も行った。
このほか、飲食店組合と提携したキャンペーン展開、外国人対応観光ツアーや地域旅行商品販売サイトの各造成、三陸ジオパーク、みちのく潮風トレイルを生かした取り組みにも力を入れてきた。
DMO(観光地域づくり法人)は地域の「稼ぐ力」を引き出すとともに、地域経営の視点に立った観光地域づくりの司令塔としての役割が期待され、設立の動きが広がる。観光庁による審査を経て登録されれば、関係省庁による各種支援メニューの提供や総合的なアドバイスなどを受けることができ、組織の安定化にもつながるとされる。
県内をみると、公益財団法人さんりく基金は地域連携DMOとして認定され、三陸沿岸13市町村を対象としている。地域DMOは宮古市や釜石市などの組織が登録され、特色ある活動を展開している。
大船渡地域戦略が候補申請していたのは、大船渡市を区域としてマネジメントやマーケティング等を行う地域DMO。今後の主なターゲットに▽ビジネス出張者を含む「ひとり旅行者」▽首都圏に住む旅好きグループ▽台湾、東南アジアからのインバウンド客──を想定する。ひとり旅行者のニーズに沿った観光面などの資源強化に加え、三陸沿岸に関する情報発信や観光体験・滞在コンテンツの強化を見据える。
市内の中心市街地にはホテルや飲食店が集まり、ビジネス関連の宿泊も多い。八戸から仙台までを結ぶ三陸沿岸道路の中央部にも位置し、三陸観光の〝ハブ〟や拠点になれる可能性に着目している。観光地域づくりのコンセプトには「大船渡は岩手三陸観光を『つなぐ港』~コンシェルジュとして沿岸観光をつなぐ~」を掲げる。
三陸沿岸を巡る際の「必須の立ち寄り場所」としての認識を定着させ、大船渡から他地域に旅行に出向く流れづくりを進める。ホテルや旅行だけでなく、キャンプ場や廃校を活用した施設など、さまざまなニーズに対応できる市内宿泊施設を活用。豊かな海産物を中心とした食分野の充実、深夜まで営業している飲食店などの発信も力を入れる。
登録DMOの要件は▽観光地域づくりへの多様な関係者の合意形成▽各種データ等の継続的な収集・分析、データ等による明確なコンセプトに基づいた戦略(ブランディング)の策定、KPIの設定・PDCAサイクルの確立▽法人格の取得、責任者の明確化、専門人材の確保──などとなっており、大船渡地域戦略は今後、登録に向けた取り組みを進める。観光推進協議会を立ち上げて地元関係事業者とともに事業を進める体制をとるほか、地域関係者の理解促進を見据えたセミナー、市民向け説明会も見据える。
志田理事長は「やっとスタートラインに立てた喜びと、これから頑張らなければならないという身の引き締まる思い。大船渡は港町である半面、観光への認識が強くなく、インバウンド増の波及効果を受けていない。もっと地元事業者や地域住民の方々と協力する体制をとるためにも、活動を周知していきたい」と話し、意欲を見せる。