給付型奨学金制度創設へ 佐々木市長の選挙公約 入学一時金20万円+毎月3万円 対象は市出身の大学生ら想定

 陸前高田市議会の全員協議会は29日に開かれ、市当局は返済不要の給付型奨学資金制度を年度内に創設する方針を示した。佐々木拓市長が選挙公約として掲げた人材育成対策の一つ。同市出身で、経済的に修学が困難な大学生や専門学校生らを対象とし、来年度は新入生や在校生合わせて最大20人への支援を想定。20万円の入学一時金と月額3万円の奨学金を交付する。大学生ら向けの給付型奨学金制度が運用されれば、県内初になるとみられる。 (高橋 信)

 

 受給するには成績が特に優秀で、親などの生計維持者が給付日からさかのぼり、少なくとも2年間市内に住んでいることが条件。市外の高校に進学、卒業した大学生や専門学校生らも対象に含める。
 給付期間は、正規の就学期間(短大は2年、大学は4年、または6年など)。例えば、4年制大学の学生の場合、入学一時金と各月の奨学金を合算すると、4年間で計164万円が給付されることとなる。
 申請の受け付け開始は、11月上旬を見込む。学識経験者ら7人以内でつくる選考委員会が審査し、給付する学生を決めたうえ、来年3月に入学一時金を配り、同年5月から奨学金を毎月交付する。
 来年度の給付人数は20人を想定しているが、令和7年度以降は年間10人をベースにする。ただし、同年度からふるさと納税の寄付金も財源に充てることとし、寄付額に応じて給付人数を増やす考えだ。
 市当局は入学一時金費用などを盛り込んだ本年度一般会計補正予算案や関連する条例案を、開会中の市議会定例会に提出している。
 同市では昭和40年代に、貸与型の奨学金制度を創設。高校生には月額1万円と入学一時金10万円を、大学・短大・専門学校生らには月額3万円と入学一時金20万円を交付している。
 地域の要望を踏まえ、運用しながら支援を拡充。返還期間は10年以内となっているが、令和元年度には、卒業後に市内へ居住する社会人であれば返済を減免する制度を設けるなど、近年も制度改正を重ねてきた。
 同制度は毎年10~12人程度の想定で募集。市教委によると、令和4年度の貸付実績(新年度の入学一時金分を除く)は、人数が約40人、金額が約1340万円だった。
 貸与型は給付型新設後も残し、二つの制度を運用することとなる。貸与型を利用している学生の給付型への移行も可能とする。
 佐々木市長は「このまちで生まれ育った若者が、経済的な理由で自身の夢を諦めないよう支援をしたい。一方で、給付型ゆえに適切な運用が求められ、注意を払っていく。将来的にはふるさと納税の寄付金を充当することも検討しており、使用の目的を市内外にPRして財源確保に努めたい」と力を込める。