聖地沸かせた気仙球児たち 大船渡一中出身・仁田投手(仙台育英)北條選手(花巻東) 8日開幕の鹿児島国体出場へ 甲子園に続く再戦誓う
令和5年10月1日付 6面


今夏の全国高校野球選手権大会(夏の甲子園)で準優勝の宮城県代表・仙台育英と10年ぶりの8強入りを果たした本県代表・花巻東。大船渡市立第一中学校出身の仙台育英・仁田陽翔投手(3年)と花巻東・北條慎治選手(同)も出場し、熱いプレーで聖地を沸かせ、東北に勇気と希望をもたらした。2人は高校最後の舞台となる鹿児島国体(8日~)への出場が見込まれ、「次は国体で戦おう」と再会を誓う。
2年連続の決勝進出を果たした仙台育英。仁田投手は2試合にリリーフ登板し、2回3分の2と出番は限定されたが、今大会の左腕投手としては最速の149㌔をマークするなど、ポテンシャルの高さを見せつけた。
昨夏の甲子園と今春のセンバツを経験し、3度目となった甲子園のマウンドを振り返り、「雰囲気には慣れていたつもりだが、やはり特別な場所。チームの勝利のために力を出し切ろうと投げたが、思うような投球を見せられず悔しい結果だった」と唇をかんだ。
一方の花巻東は、4年ぶりの夏の聖地。エースナンバーを背負い、投打の柱として出場した北條選手は、4試合全てでスタメン入りし、磨き上げた打撃と丁寧な投球、外野手としての好守などでチームの8強入りに大きく貢献した。
2年春のセンバツはベンチ入りしたが、出場はなく「一瞬で終わってしまった」と回顧。初の甲子園での試合に「憧れの舞台で4試合やれたことは宝物。楽しかった」と笑顔を見せた。
くしくも両校は、準々決勝で激突。東北勢の対戦であると同時に、大船渡一中出身の2人の〝同級生対決〟にも注目が集まった。
結果は、仙台育英が9―4で花巻東を下したが、最終回の花巻東の攻撃、北條選手の四球を皮切りに、一挙4点を奪った諦めない粘りの反撃は、多くの人に感動を与えた。
仁田投手は七、八回に登板、北條選手は投打でフル出場を果たし、打席での〝直接対決〟はかなわなかったが、中学卒業時に誓った「甲子園で戦おう」という約束を実現させた。「投打、守備の活躍で成長した姿を見せていた」(仁田投手)、「打線を抑え、球の強さや精度ともに自分を上回る投球だった」(北條選手)とお互いの成長を認め合った。
この試合後、あいさつを終えた仁田投手のもとに北條選手が駆け寄り、声をかけた。「絶対勝てよ」。その言葉に仁田投手は「大きな力をもらった」という。
甲子園を終え、2人は大船渡に帰省し、お世話になった人たちへあいさつに行ったり、同級生らと会ってリフレッシュした。つかの間の休息を経て、高校最後の舞台である鹿児島国体へ向けて調整を進めている。
大船渡から野球の強豪校にそれぞれ進み、「野球だけでなく、人間としても学びが多く、充実した生活だった」とこれまでの日々を振り返った2人。仁田投手は「多くの方から大きな応援をいただき、それが力になった。甲子園では自分の投球を見せられなかったが、日々の取り組みに向き合って、国体をいい形で終わりたい」、北條選手は「自分たちがプレーする姿を見せることで、地元にも元気を与えられたかなと思う。人として成長した部分を次のステップでも生かしたい」と意気込みを語った。
鹿児島国体は8(日)~11(水)の3日間開催。仙台育英は、甲子園決勝の相手である慶応、花巻東は大阪府代表・履正社との初戦に挑む。(菅野弘大)