「デジ田」改訂巡り議論 総合戦略推進会議で構成案示す デジタル化、シティプロモーション推進へ
令和5年10月4日付 1面

大船渡市総合戦略推進会議(会長・山本健県立大総合政策学部教授)が3日に市役所で開かれ、市当局は市デジタル田園都市国家構想総合戦略(仮称)の構成案を示した。令和2~6年度を期間とする「まち・ひと・しごと創生総合戦略」を本年度改訂し、コロナ禍で進行したデジタル技術を活用し、各種課題解決を図る。現戦略のプロジェクトを整理し、市民サービスや行政、子育て、産業などの各分野でのデジタル化に加え、移住・定住の促進やふるさと納税推進、ブランド確立といったシティプロモーションの推進も見据える。(佐藤 壮)
推進会議は、まち・ひと・しごと創生総合戦略の展開にあたり、外部視点による効果検証を行う機関。学識経験者、福祉団体、産業団体、金融機関の各代表者・関係者ら8人で構成している。この日はオンライン参加も含め委員7人と、関係部課長が出席した。
市当局は現戦略に基づく4年度までの成果を説明。市総合計画の重点プロジェクトに位置付け、人口減少対策を総合的に推進した一方、プロジェクト数が多く、一層の重点化や整理の必要性に言及した。
また、期間中はコロナ禍で社会環境が大きく変化。デジタル技術の活用が多方面で進行する状況などをふまえ、デジタルの力を生かした新たな事業・サービスの提供、ビジネスモデル開発を見据える点も強調した。
新たな視点として、デジタル化の視点に加え、シティプロモーションの推進を重点分野に加える。市の認知度やブランド力向上を図るほか、市民向けにも市の魅力をアピールしながら「地元への誇り」を醸成する。デジタル化やシティプロモーションは、国からの交付金確保に加え、企業版ふるさと納税の呼び込みにも力を入れながら地方創生の推進を図る。
デジタル化に関する意見交換では、委員から「人口減に加えて職員自体の確保も難しい中、質の高いものを」「高齢化社会で、ついていけない住民も考えられる。過渡期にどう対応するか」「子育て世代や女性の視点も大事に」といった発言が出た。
デジタル田園都市国家構想総合戦略の計画期間は5~9年度の5年間。現戦略からの改訂にあたり、骨子案に掲げる基本目標は4項目のまま変えずに▽大船渡にしごとをつくり、安心して働けるようにする▽大船渡の魅力を発信し、新しい人の流れをつくる▽大船渡で安心して子どもを産み育てられるようにする▽大船渡で生涯暮らし続けられる地域をつくる──とし、一部文言を見直した。
基本目標に基づく施策は、10項目から9項目へと改める。これまであった「若い世代の希望をかなえる出会いと結婚支援の展開」は、結婚観は個人差が大きく、行政が支援する目的や効果を推しはかることが困難であることから見直した。
プロジェクト数は現行の37から18と、ほぼ半減。三陸マリアージュ創出・展開や夏イチゴ産地化、椿の里おおふなと拠点形成推進などは、現戦略下では地方創生関連交付金の活用を目指して総合戦略に位置づけたものであり、施設整備を終えたことから他プロジェクトに統合するか、一般事業に振り替える。
魅力発信の基本目標に基づくプロジェクトの強化のうち、大船渡シティプロモーションは観光やブランド育成、出身者の「誇り」の醸成、観光まちづくり、ふるさと納税、三陸ジオパーク、みちのく潮風トレイルなどの充実を図る。
現戦略に盛り込んでいる「持続可能な都市形成プロジェクト」は「DXを活用した持続可能なまちづくりプロジェクト」として継続展開。市役所窓口の業務支援システムなどを導入して「書かない窓口」「行かない窓口」の実現を進める。
構成案に対し、委員からは「プロジェクトが見やすくなった」「柔軟性があっていいと思う」といった意見が寄せられた。一方でILC誘致・実現推進プロジェクトが企業立地促進プロジェクトに統合されることに関しては「正念場であり、もっと強化していくべき」「名前がなくなるのはさみしい」といった声もあった。
市当局は、この日の意見などを踏まえて引き続き調整を進め、市議会での説明や市民からの意見募集も行う方針。年度内策定を目指す。